巨人に在籍したことのない長距離砲を
第2期巨人監督時代の長嶋監督
プロ野球の長い歴史には、多くの名将と呼ばれる監督がいる。第5回WBCで侍ジャパンを率いる
栗山英樹監督も、そんな名将の1人だろう。それとは別の次元で、あの監督に侍ジャパンを率いてほしい(率いてほしかった)という夢(妄想?)を描いてしまうのも人情というものだ。ファンそれぞれの思い入れによって誰が挙がるかは変わることだろうが、2期にわたって巨人を率いた
長嶋茂雄監督も、その有力候補に違いない。
個人的には「(背番号)90番の青年監督」といわれた第1期がおもしろい気がするが、おそらく多数派は1994年に
中日とプロ野球で最初の最終戦同率優勝決定試合を戦い、現役時代の盟友でもある
王貞治監督のダイエー(現在の
ソフトバンク)と2000年に日本シリーズで激突、そして自らの永久欠番「3」を背負ったこともあった第2期になるだろう。90年代の後半からはトレードやFAで補強を重ね、他チームの四番を担うような強打者が多かったことから、「四番だけ補強」「長嶋監督の欲しがり病」などの揶揄もあったが、そんな破壊力のある打線は独特の魅力を放つものでもあった。
さて、ここは夢の世界。どうせなら長嶋監督に、時空を超えて長距離砲を徹底的に補強してもらおう。ベースとなるベストオーダーは前述した94年の巨人。そこに通算本塁打の多い順に選手をピックアップして入れていく。四番打者タイプがズラリ、ということになるのは間違いないから、そのオーダーの守備位置を固定して、そのポジションで全チームのベストオーダーに並んだことのある選手を入れてみる。足が速いから一番とか、そんな調整はしない。
一方、守備位置が完全に重なる場合は、通算本塁打が多い選手を優先して、少ない選手はオーダーには入らない。ただし、あくまでも“補強”なので、条件は巨人に在籍したことがないこと。つまり歴代トップの王や、もちろん選手としての長嶋も入らない。すると以下のようなラインアップとなる。
1(左)
金本知憲(
広島ほか)
2(遊)
池山隆寛(
ヤクルト)
3(右)
門田博光(南海ほか)
4(一)
大杉勝男(東映ほか)
5(中)
山本浩二(広島)
6(三)
衣笠祥雄(広島)
7(二)
宇野勝(中日ほか)
8(捕)
野村克也(南海ほか)
9(投)
大谷翔平(
日本ハム)
実際の巨人94年ベストオーダーは?
通算657本塁打を放っている野村
捕手の野村克也はダントツ。一塁は大杉勝男と衣笠祥雄が重なるが、衣笠は三塁も守っており、衣笠を三塁で起用することで大杉と衣笠を両立させた。捕手と一塁には
田淵幸一(
阪神ほか)、三塁には現役の
中村剛也(
西武)が控える。左翼は山本浩二、金本知憲の広島コンビが重なるも、山本が本職の中堅を守ることでクリア。左翼の控えには
土井正博(近鉄ほか)がいる。右翼に門田博光がいるが、もし日本シリーズなどで指名打者制があれば、門田が指名打者で、ダイエー時代の
秋山幸二が右翼に入れば強力だ。ただ、投手が”二刀流”の大谷翔平(エンゼルス)なので、打線に穴はないだろう。
ちなみに大谷は2014年の日本ハムで投手としてベストオーダーに並んでいるが、巨人に在籍したことがなく、投手としての通算本塁打でトップは
米田哲也(阪急、現在の
オリックスほか)となる。苦しんだのが二塁と遊撃で、正二塁手の経験がある長距離砲は
ロッテの
落合博満やダイエーの
小久保裕紀など、巨人に在籍した選手が多い。遊撃で重なるのが宇野勝と池山隆寛だが、宇野が中日で88年に守った二塁に回った。
打順は自動的に巨人の94年ベストオーダーに合わせたものだから、戦略的には調整が必要だろう。このメンバーの侍ジャパンを夢想してみてもいいかもしれない。一方、実際の巨人94年も強力で、いぶし銀タイプも並んでいて侮れない。では、四番の大杉よろしく、続きはファンの皆様の夢の中で。
(巨人1994年のベストオーダー)
1(左)
ダン・グラッデン 2(遊)
川相昌弘 3(右)
松井秀喜 4(一)落合博満
5(中)
ヘンリー・コトー 6(三)
岡崎郁 7(二)
元木大介 8(捕)
村田真一 9(投)
斎藤雅樹 文=犬企画マンホール 写真=BBM