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ソフトバンク球界初「4軍」設立。歴史的初戦は九州共立大学に逆転勝利【若鷹ファーム奮戦記VOL.1】

 

今季から新たに4軍を創設した福岡ソフトバンクホークス。12球団No.1の育成環境が強いチームの礎となっているのは間違いない。九州の地で明日のスターを夢見る若鷹たち。彼らの奮闘ぶりを週刊ベースボールONLINEで定期的に伝えていく。

121名という大所帯


初陣を飾った小川史4軍監督。右は中田賢一4軍投手コーチ


 育成ドラフト入団選手をこれまで何人もトップスターに育て上げ、すっかり「育成のホークス」との名も定着している中、今季から球界初となる「4軍」を設立した。

 4軍制となったことで、野球ファンにとって一体どんな楽しみが増えたのか。そして今後どのように変わっていくのだろうか。

 当然のごとく、選手の数は大幅に増えた。昨シーズンも4軍導入を見据えて従来の3軍活動を拡充しており、2021年に90名だった保有選手数を2022年は105名まで増やしていた。これが今季4軍制本格導入にあたり、現時点で121名という大所帯となった。うち54名が育成選手である(3月20日時点)。

 もちろん試合数も激増だ。昨季の“拡大”3軍でも140試合を組んでいたが、今季は3・4軍戦合わせて229試合が行われる予定だ。

 それに伴ってファーム本拠地のタマスタ筑後で開催されるファーム戦もやはり多くなる。昨年は93試合だったものが、今季は2〜4軍で121試合を予定。ファームのシーズンは基本的に3〜9月(214日間)なので、2日に一度以上のペースで試合が組まれている。未来のスター候補を誰より早めに見つけて応援したい若鷹ファンにとっては最高の観戦環境だ。

 さらに2軍戦についてはエンタメ性の強化やスタジアムグルメの充実に取り組んでいき、3・4軍戦は中学生以下のこども(自由席)が無料入場できるなど、ターゲットに合わせた興行も展開。なかなか球場へ足を運べないファンに向けても「ホークスTV」にて2・3・4軍のタマスタ筑後開催試合については全試合中継予定で、今後最先端を駆使した「AI自動中継」の導入も検討されている。

4軍が初の対外試合


逆転の2ランを放ち勝利に貢献した中村宜聖


 そんな4軍は、3月7日に初めての対外試合を行った。九州共立大学の野球場グラウンドに出向いての九州共立大学戦だった。客席はネット裏にわずか設置されているのみで、選手たちにとってはロッカールームもない。まさしく「ここから這い上がる」という意味合いが感じ取れる環境でのスタートだ。

 試合はホークス4軍が逆転勝ちを収めた。打線が6回まで2安打無得点と沈黙していたが、1点ビハインドの7回表1アウト一塁で中村宜聖が変化球を思いっきり引っ張って逆転の左越え2ランを放った。

 さらに8回表2アウト一塁では石塚綜一郎が同じく左翼へ2ラン。その後1点差に詰め寄られるも9回表に勝連大稀の適時打、石塚の2点適時打、居谷匡真の右越え2点三塁打で一挙5点を加えて大きく突き放した。

 石塚は3安打4打点の活躍。第1打席で遊撃内野安打をマークし、これが、ホークス4軍が記録したチーム初安打だった。

先発は内野手登録の小林。今季から二刀流に挑戦


 一方、4軍初試合の先発投手を務めたのは「内野手」登録の小林珠維だった。昨季まで支配下だったが、3年間一軍昇格がなく背番号157での再出発。球団としては二刀流の可能性を残しつつも、小林は「春のスタートがいい感じなので、よければ投手として勝負して行きたい」と意欲を示している。今春2度目の登板。最初は中継ぎで、この日が初先発だったが落ち着いた投球で1回無失点に抑えた。最速は149キロをマークした。

 また、6回裏のマウンドには育成ドラフト1位ルーキーの赤羽蓮投手が5番手で登板し、遊ゴロ、空三振、遊ゴロで3つのアウトを簡単に取る好投を見せ、初登板で4軍の初代勝利投手となった。

 初陣を飾り、小川史4軍監督は「4軍は勝利を追い求める場所ではないけど、最初の試合だし勝つことができて多少はホッとしたよ。先発した小林は良かったし、クワ(2番手で1回3者凡退の桑原秀侍)ね。クワはもう少ししたら野手としても出場させたい。(育成14位ルーキーの)盛島も落ち着いていたし。赤羽もよかった。大したもん。4軍が出来たことで実戦機会は増える。ゲームを積み重ねることで肉体的にもそうだけど、精神的にも強くなる。選手をタフに育てていきたい」と目を細めながら話していた。

 1軍のペナントレースが開幕する頃には、1〜4軍の区分がより明確化される。4軍は3月25日から「ヤマエグループ九州アジアリーグ」の大分B-リングスと3連戦を行い、そして4月3日には記念すべき4軍本拠地開幕戦(同リーグ・宮崎サンシャインズ戦)を迎える。

 この日は試合前セレモニーも実施され、将来のスターを生むホークス4軍のスタートを華々しく盛り上げる。また、当日は子どもだけでなく、大人も入場無料となる。この日しかない「最初の一日」を、ぜひその目に焼きつけてほしい。

文&写真=田尻耕太郎
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