「魔曲です」
報徳学園高の応援のリーダー役・大崎元輝は、大盛り上がりの三塁アルプス席をけん引した
「逆転の報徳」である。
史上初となる2度目(通算4度目)の春連覇を狙った大阪桐蔭高との準決勝(3月31日)。報徳学園高は0対5からのビハインドを引っ繰り返し、7対5で勝利し、優勝した2002年以来の決勝進出を決めた。
試合前、三塁アルプス席で報徳学園高の応援のリーダー役・大崎元輝外野手(3年)は興奮気味に話していた。
「世間では大阪桐蔭が優位という声もありますけど、勝つのは報徳です。報徳は勢いに乗っています!!」
報徳学園高には心強いチャンステーマがある。応援曲「サンバ」である。原曲は「サンバ・デ・ジャネイロ」。多くの高校野球の応援で採用されているが、同校が元祖。2014年夏からの伝統を継いでいる大崎は言う。
「魔曲です。絶対に点が入る。負けません」
試合は劣勢の展開だった。3回表に5失点。報徳学園高は3回裏無死二、三塁の好機を迎える。そこで「サンバ」の登場だ。
「ハイヤハイヤー! アゲアゲホイホイー! もっともっとー!」
チャンステーマがかかった瞬間に1点を返し、さらに1点を加えた。3点差である。
報徳学園高のチャンステーマ「サンバ」の楽譜。甲子園名物の応援歌である
7回裏無死一、二塁から暴投で二、三塁。この試合2度目の「サンバ」で、場内は大盛り上がり。三塁アスプス席に触発された左翼スタンドまでも、ノリノリのダンスと手拍子が繰り広げられた。ムードは完全に報徳学園高。このイニング、3得点で同点に追いついた。
もう、止まらない。8回裏には大阪桐蔭高のエース左腕・
前田悠伍(3年)を攻略し、2得点で逆転に成功。3度目の「サンバ」。すべての得点シーンに絡んだ。
注目の近畿対決。地元・兵庫の名門校が、高校野球界をリードする大阪の強豪校を下した。声出しが解禁された今大会。間違いなく、「逆転の報徳」を後押ししたのは、大応援だった。
文=岡本朋祐 写真=BBM