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ヤクルト・田口麗斗が守護神で抜群の安定感 「トレード移籍の最高傑作」と称賛が

 

決定打を許さない左腕


今季は守護神を務める田口。すでに4セーブをマークしている


 開幕7試合を終えて6勝1敗。スタートダッシュに成功したヤクルトの新守護神を務めるのが田口麗斗だ。

 4月7日の阪神戦(甲子園)で2点リードの9回にマウンドに上がると、一死一、二塁のピンチを迎えた。阪神ファンの大声援が響き渡るアウェーの環境だが、動じない。五番の佐藤輝明を外角低めの143キロ直球で中飛に仕留めると、六番のドラフト1位・森下翔太を内角低めに鋭く横滑りするスライダーで空振り三振。無失点で締めくくり、開幕から4試合連続セーブをマークした。

 球団史上初の3連覇を目指すチームの懸案事項が、試合の最後を締めくくる抑えだった。21年に31セーブ、昨年は38セーブと抑えを務めたスコット・マクガフが昨季限りで退団。新外国人のキーオン・ケラ、21年にNPBシーズン最多の50ホールドを挙げるなどセットアッパーとして活躍してきた清水昇、最速155キロの直球で相手をねじ伏せるパワーピッチャーの木澤尚文と候補がいる中で、高津臣吾監督が指名したのは田口だった。

 左腕から繰り出される直球は145キロ前後と球威があるわけではない。変化球も絶対的な球があるわけではないため、クローザーへの抜擢は意外な決断に見られたが、田口の真骨頂は走者を背負っても、決定打を許さない安定感だ。昨年は開幕から26試合連続自責点ゼロを記録。5月24日の日本ハム戦(神宮)の快投を鮮烈に覚えているファンは多いだろう。1対1の延長10回無死満塁の場面で登板すると三者凡退の無失点で抑え、サヨナラ勝利に導いた。

21年開幕前にヤクルトへ


 ヤクルトは他球団から移籍した選手が輝きを放つ歴史がある。1990年代に「ID野球」で黄金時代を築いた野村克也監督は他球団の選手を復活させる術に長けていたことから、「野村再生工場」と称された。田畑一也(現韓国・三星二軍投手コーチ)、吉井理人(現ロッテ監督)、辻発彦(元西武監督)、小早川毅彦がその代表例だ。野村氏の教えを受けた高津監督も選手の能力を引き出す采配、起用法に定評がある。田口を廣岡大志との電撃トレードで獲得したのは21年の開幕前。巨人で17年に13勝をマークするなど左のエースとして活躍し、移籍後はコマ不足の先発で期待されたが、なかなか白星がつかず左腕のリリーバーが不足していたため、シーズン途中に救援に配置転換された。

 巨人でも救援で稼働していた時期があったが、現役時代に球界を代表する守護神として日米通算313セーブをマークした高津監督は、安定した制球力と精神力の強さを兼ね備えた田口にリリーバーとしての資質を見出していたのだろう。今年のオープン戦に8試合登板で安打を1本も許さず無失点とほぼ完ぺきな投球を見せたことで、守護神を託した。

新境地を開くシーズンに


 ヤクルトを取材するスポーツ紙記者は、「長いシーズンなので田口を抑えで1年間固定するのか不透明な部分はありますが、ヤクルトの救援陣に不可欠な存在であることは間違いありません。チームに与える影響力を含め、近年のトレード移籍で最高傑作と言ってよいのではないのでしょうか」と評価する。

 破壊力抜群の打線がチームの看板だったが、今年は投手陣が開幕から抜群の安定感を誇る。7試合で計6失点のみ。1試合の平均失点数が1点を切る。先発、救援陣が互いの好投に刺激を受けてマウンドに上がっているように見える。明るい性格でムードメーカーとしても、すっかりチームの中心選手になっている田口。シーズン中は勝利した試合後に一塁ベンチ前で、観客へ声援を求めて手拍子に合わせて拳を突き上げるパフォーマンスが「神宮名物」に。今年は試合の最後を締めくくり、新境地を開くシーズンになりそうだ。

写真=BBM
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