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首都大学リポート

イップスを乗り越えた明治学院大の左腕・家接光輝 目標は「この1年間で5勝すること」【首都大学リポート】

 

本人の希望で投手に専念


明治学院大の左腕・家接は今シーズン、大黒柱として活躍することを目標にする


【4月8日】一部リーグ戦
明治学院大4x−3筑波大
(明治学院大1勝)

 首都大学リーグ第2週1日目。開幕週は連敗を喫し、勝ち点を落とした明治学院大だったが、筑波大1回戦では1対3の9回裏に3点を挙げ逆転サヨナラ。見事に今季初勝利を挙げた。この白星を呼び込んだのは2番手として登板し、6回1失点(自責点0)の好投を見せた左腕・家接光輝(3年・静清高)だ。

「高校で『野球は辞めよう』と考えていたのですが、どうしても『もう一度ピッチャーとして高いレベルを目指してみたい』と思ったんです」。そう振り返る家接は、中学時代は投手としてプレー。ただ、高校は打撃を買われて静清高(静岡)に入学することとなった。明治学院大で指導にあたっている金井信聡監督も「高校時代はクリーンアップでしたし、今のこのチームでも1、2を争うほどのバッターではないかとさえ思っています。私としては二刀流で両方やらせたかったのですが、本人の希望もあってピッチャーに専念しています」と、打撃に対する評価が高い。

 高校1年時にイップスを経験。3年間、外野を守っていたが「高校時代はずっと、まともに投げることができなかった」という。

 明治学院大に入学後はイップス克服のため、地道な練習に取り組んだ。「ひたすら投げ込みをしていました。全然、コントロールができなくてボールがあちこちへ行ってしまうのですが、多いときは一日で200球くらい投げていました。結局、急激に改善することはなかったですね」。ただ投げることしかできず、出口の見えない長い戦いだった。

 しかし、「本当にちょっとずつ良くなっていった感じです。小さな積み重ねを続けることでここまで来られました」と昨秋、ついに一部リーグでデビューを飾った。2試合に登板し、5回2/3を投げて自責点1。勝ち負けはつかなかったが防御率は1.59と及第点の結果に見えるが、本人は「何度もマウンドに上げてもらったのに、思うような結果を出すことができずに悔しかった。その思いをこの冬のトレーニングにぶつけてきました」と、さらなるレベルアップを目指してきた。

「昨秋は一部を経験し、球の強さもコントロールも変化球もすべてが足りないと感じ、一から体作りに励みました」。また、調子の波が大きかったこともあり、安定感を得るためにフォームチェックに時間を費やした。

「軸足を股関節から押し、地面から力を伝えていけるようにしています。それから、横を向いている時間が短いと体重移動をする時に腕が付いてこずにボールの強さやコントロールが悪くなるので、横を向いている時間を長くするようにしています」

勝利を呼び込んだピッチング


 こうして迎えた今春のリーグ戦では開幕から3試合連続で救援登板。日体大1回戦では自己最速の144キロをマークし、3回1/3を投げて2安打1失点。そして、筑波大1回戦では2点ビハインドの4回表から登板するとエラー絡みで1点は失ったが、ランナーを出しながらも粘りのピッチング。6回表は3つの四死球で二死満塁のピンチを招くも「結果を気にしても仕方がないので『今できる自分のベストボールを投げよう』と思いました」と、一番、自信があるというストレートで右飛。7回表も2本の安打で二死二、三塁とされるが、最後は昨秋の侍ジャパン大学代表の強化合宿にも参加した好打者・生島光貴(4年・福岡県立福岡高)をインコースからのスライダーで見逃し三振に切って取った。

 この好投に打線が応え、2点を追う9回裏に中島義明(4年・作新学院高)のタイムリーで1点差に迫ると、なおも満塁から主将の近岡英訓(4年・八王子高)がライト線へ弾き返し2者が生還。劇的なサヨナラ勝ちを挙げた。

 勝利を呼び込んだ家接は、これが初勝利で「シーズンを迎える前に『この1年間で5勝すること』を目標にしました。昨秋はチームで1勝しかできなかったので高い目標だとも思いましたが、1勝目を挙げることができて良かった。高校からつらい時間が長かったので、その分、うれしいです」と喜びを語った。

 金井監督は「ランナーを出しながらも抑えていく投手なので、今日もいつもどおりのピッチングをしてくれました。そして、彼はスタミナがあるので、明日も投げてくれると思います」と口にした。体力面は、家接によると「イップスを治すために投げ込んでいたおかげでスタミナが付きました」と話しており、思わぬ副産物も手に入れていたようだ。悩んできたイップスについては「今でも完全に克服できたとは思っていませんし、まだ不安はあります。でも、気持ちでカバーしています」と話す。一時はあきらめた野球だが、ピッチャーへの情熱で乗り越えようとしている。今後もどのような活躍をしてくれるのか楽しみだ。

文=大平明 写真=BBM
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