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【高校野球】10年ぶりのシード権を獲得した湘南 公式戦後に塾通いの主将は文武両道の模範生

 

冬場の名物練習が自信の裏付けに


湘南高の主将・志太は背番号10。チームリーダーは声でチームを鼓舞し、ベンチだけでなく、控え捕手としてブルペンを盛り上げる


 夏の甲子園出場をかけた神奈川大会のシード校は、春の県大会上位16校。湘南高は慶応湘南藤沢高との3回戦(4月16日)を10対3で制し4回戦進出を決め、10年ぶりのシード権を手にした。昨季限りでユニフォームを脱いだ左腕・宮台康平(東大→日本ハムヤクルト)がエースだった2013年以来である。

 湘南高の主将・志太琉之裕(3年)は言う。

「自分たちは、そこは考えずにやってきた。取り組んできたことが、結果としてついてきて良かったです」

 昨秋は県大会初戦(2回戦)で、横浜商高に敗退(5対6)した。

「昨夏の県大会では初戦敗退し『自分たちの代は負けないようにしよう』と練習を重ねてきましたが、結果が出なかった。公式戦は素の姿が顕著に出る。当たり前のことを当たり前にする難しさを、ずっと意識してきました」

 湘南高は県下トップの進学校だ。学業が多忙で、常日ごろから練習時間が十分に確保できるわけではない。就任14年目の川村靖監督は「整理整頓、時間厳守、あいさつ、授業態度」の4本柱を指導してきた。指揮官は言う。

「自分が思っていることを、実戦の場で発揮するには、それ(野球)以外のところで強くならないと勝てない」

 湘南高には冬場の名物練習がある。「ハードワーク」と呼ばれる「通い合宿」は、オフシーズンの12月から2月までの土曜日、日曜日に行う。朝6時30分からランニングで汗を流したあとは、打撃組と勉強組に分かれる。午後からは全体でのメニューを消化する。

「今年は13回ほどあったんですが『これだけやってきたんだ!』という自信の裏付けとなるメニューでした」(志太主将)

 志太主将は背番号10。「ベンチだからこそ、見えるものがある。自分が感じたことを伝えています。一番、声を出している自負がある。自分にしかできない役割」と、チームのために献身的に動く。一方で、試合終盤にマスクをかぶる控え捕手として、存在感を見せる。

「勉強道具は持ってきました」


 東大志望のキャプテンは週5回、藤沢市内の塾に通っている。原則、平日に受講するが土、日曜日も時間の許す限り足を運ぶという。

「(今日の試合会場の日大藤沢高グラウンドにも)勉強道具は持ってきました。これから、塾に向かおうかと思っています」

 夏のシード権をかけた公式戦後、制服に着替えて塾通い。頭が下がる文武両道の模範生だ。

 春の県大会16強は第3シード。22日に予定される4回戦(相洋高と横浜商大高の勝者)で勝利すれば、宮台がいた13年以来の第2シードを手にできる。志太主将は言う。

「簡単にいかないことは、分かっている。でも、自分たちのやることは一緒。土曜日(22日)までの時間を大切に使いたいと思います」

 神奈川県大会の4回戦以降は有料試合となる。公営球場でもあり、雰囲気は大きく変わる。夏の県大会と同じようなムードを味わえるのは、財産だ。ステージは大きくなるが、湘南高としては、背伸びをする必要はない。準備、過程ですべてが決まる。生活が野球に出ることを、深く理解する集団だ。日々、向き合ってきたことを信じて、継続するだけである。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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