ガッチリかみ合う投打
今の広島はビハインドをはね返す反発力がある。
4月15日のヤクルト戦(マツダ広島)で1点差を追いかける9回二死で、代打・
堂林翔太が出塁すると、
秋山翔吾が相手守護神・
田口麗斗のスライダーを逆方向の左翼スタンドに運ぶ逆転サヨナラ2ラン。翌16日は初回に5点を失ったが、気持ちは折れない。6回に
田中広輔が
星知弥の149キロ直球を右翼席に運ぶ2号満塁弾で同点に追いつく。7回には代打・
小園海斗の右中間三塁打で好機を作り、マクブルームの中犠飛で勝ち越し。8回も
坂倉将吾の2号右越えソロで突き放し、7対5でヤクルト戦同一カード3連勝を飾った。
敵地で開幕3連敗を喫した相手にきっちりリベンジ。昨年5月13日以来、338日ぶりに単独首位に浮上した。開幕4連敗の後、8勝1敗と投打ががっちりかみ合っている。
スポーツ紙記者は、「リーグ3連覇した2016〜18年に雰囲気が似ているんですよね。打線に切れ目がないので、劣勢をひっくり返せる。
新井貴浩監督の下で受け身に回らず、常に攻撃な姿勢で戦っている。セ・リーグは混戦模様なので、この戦いを貫けば十分にチャンスがあると思います」と指摘する。
チーム再建を託された新井監督
黄金時代が懐かしい過去になろうとしていた。19年から4年連続Bクラスに低迷。救援陣が不安定だったことや、自慢の機動力が機能しなかったことなど原因はさまざまだが、選手たちから自信が失われているようにも感じた。チーム再建を託されたのが、新井貴浩監督だった。
球団OBの
川口和久氏は、週刊ベースボールのコラムで、こう綴っている。
「昨年の5位から巻き返しを期す広島は3連覇から4年が過ぎ、当時の中心選手も減ってきた。過去は過去とし、また一からの覚悟でチームをつくり直していく時期ではある。その点では、まさに新井貴浩新監督は適任だね。かつてのカープ、そして自身がそうだったように、キャンプから厳しい練習の積み重ねと競争を課し、選手に闘志を植え付けていくのだと思う。ここに近道はないし、新井監督も近道を選ぶタイプではないだろう。とはいえ、やるからには優勝が大目標となるし、十分なチャンスもある。そのためにクリアしなければならないテーマは2つだ」
「1つは交流戦。昨年、序盤はよかったが、交流戦で失速した。5勝13敗と8個の借金はあまりに痛い。中止となった20年を挟んで3年連続交流戦最下位が続いているが、相手の研究不足というより、データに左右され過ぎているのかもしれないね。もう1つは対ヤクルトの8勝16敗1分け。村上に13本塁打を打たれ、村上、
塩見泰隆、
山田哲人、
山崎晃大朗と軒並み3割超えの高打率を許した。特に前半は完全にカモにされ、ヤクルトを走らせる要因になっている。新井カープには、この2つの嫌な流れを断ち切ってほしい。極端に言えば、2つの勝敗をひっくり返せば、昨年も優勝が見えていたということだしね」
25年ぶりVの16年も低かった下馬評
快進撃を手放しで喜ぶのはまだ早いかもしれない。川口氏が指摘するとおり、鬼門の交流戦をどう戦うかも大きなポイントになる。昨年は25勝19敗で貯金6と良い形で春先を乗り越えたが、交流戦で5勝13敗と大失速。最下位に沈み、リーグ戦再開後も勢いが失われた。
25年ぶりのリーグ優勝を飾った16年もエース・
前田健太(現ツインズ)がポスティングシステムでドジャースに移籍したため、開幕前の下馬評は決して高くなかった。選手個々の能力は高い。今月15日にエース・
大瀬良大地を登録抹消したのも、長いシーズンを見据えての判断だろう。赤ヘルが王座奪回に向け、自信をみなぎらせている。
写真=BBM