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【高校野球】甲子園制覇から遠ざかる横浜は何が足りないのか? 行き着いた結論は「攻撃力」

 

「一振りでゲームの流れを変えることが大事」


横浜高は桐光学園高との神奈川県大会3回戦で勝利。2020年4月から母校を指揮する村田監督も手応えを感じている


 横浜高の夏の甲子園優勝は、松坂大輔を擁した1998年が最後である。

 2020年4月から母校を指揮する村田浩明監督は21年夏、22年夏の甲子園出場へと導いている。ともに、1回戦を突破したものの、2回戦で敗退した。激戦区・神奈川の代表になること自体が大変なことだが、春3度、夏2度の全国優勝を誇る名門校からすれば、大会序盤で甲子園を去っては、達成感を得られない。

 村田監督は選手たちの頑張りを常に認めながらも、甲子園で上位へ進出しなければ、評価されない学校であると自覚している。

 頂点に立つためには、何が足りないのか。

 行き着いた結論は「攻撃力」である。昨秋は県大会優勝も、関東大会は健大高崎高(群馬)との準々決勝で敗退(2対5)。センバツ選考委員会では「関東・東京地区」のラスト7枠目をめぐる選考で、あと一歩で逃した(東京2位校・二松学舎大付高との比較検討)。

「夏の甲子園後、過密日程の中で、チームづくりもできないまま県大会を戦い、関東大会も発展途上の中での戦いが続きました。選手個々の能力だけでやっている感じ……。結果的に勝負どころの関東大会準々決勝を落としました」

 冬場は攻撃力アップをテーマに、じっくりとチームを鍛え上げてきた。村田監督は技術指導において、一つひとつ段階を踏んできた。

「就任当初はただの大振りでしたので、ボールの内側をたたくように指示しました。この冬は体を使ったスイング、下半身との連動性、体重移動を意識させました。『横浜の強さを見せよう!』と、朝から晩までやってきました。1ヒットでは点は入らない。一振りでゲームの流れを変えることが大事です」

一発攻勢で因縁の相手に雪辱


 成果を試す場となった春の県大会初戦(2回戦)は、法政二高の左腕・児玉賢斗(2年)の緩急自在の投球に手を焼き、4得点(4対1で勝利)。これが教訓となり、桐光学園高との3回戦までの8日間、もう一度、原点に戻って「体を使う打撃」を見直してきたという。

 夏の県大会のシード権をかけた3回戦(4月18日)で、横浜高は5本塁打を放ち、10対2の7回コールドで快勝。3回裏に荻原晴(3年)のソロで先制すると、1対1の4回裏に椎木卿五(2年)が勝ち越し2ラン、続く先発左腕・杉山遙希(3年)がソロ、5回裏は上田大誠(2年)が満塁弾、椎木が2打席連続のソロで突き放した。ホームランによる得点は9得点と「空中戦」で圧倒した。21年春は準決勝、22年春は準々決勝で敗退していた因縁の相手に雪辱したのである。エース左腕・杉山は7回2失点に抑え、投打がかみ合う完勝だった。

「桐光学園高さんが相手で、神奈川の一つの山を越えられた。『やり返すチャンスだ』と言ってきて、選手たちに思いが伝わり、よくやってくれました」(村田監督)

 反省も忘れない。試合の入りが悪かった。

「桐光さんは初回、積極的に振れていたのに対し、ウチはバットが出ていなかった。『そうじゃないだろう』と。ストライクを振る練習をしてきて、2回以降は実践してくれました」

 侍ジャパンは世界一に輝いたWBCで、投手力を軸に守りを固め、攻撃陣はかつての「スモールベースボール」ではなく、強打を前面に押し出した戦いを展開した。高校野球界も時代とともに攻撃力がクローズアップされ、横浜高も力で圧倒するスタイルを追い求めている。

 村田監督は「たくさんの山がある」と言った。もちろん、目指すは全国の頂である。勝負の夏を見据え、挑戦の春を過ごしている。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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