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首都大学リポート

30年ぶりに一部で勝ち点を奪取した明治学院大 強打&一塁守備でチームをけん引する小澤輝【首都大学リポート】

 

バットコントロールに自信


明治学院大の小澤は打線の中心である


【4月23日】一部リーグ戦
明治学院大6−4武蔵大
(1勝1敗)

 首都大学リーグ第4週2日目。前週の筑波大戦で1993年春以来、実に30年ぶりとなる一部での勝ち点を挙げた明治学院大。先週は前日に先勝を許した武蔵大との2回戦に臨んだ。この試合でタイムリーを放ち、チームを勝利に導いたのが小澤輝(ひかる。3年・桐光学園高)だ。

 1回表、二死二、三塁のチャンスで打席に立つと「初球から真っすぐが来たら全力で振っていこうと思っていました」とバットを振り抜いた打球はセンターの頭上をライナーで越えていく先制の2点適時三塁打。この一打をきっかけに序盤からリードを奪った明治学院大は6対4で武蔵大を下し、対戦成績を1勝1敗のタイに持ち込んでいる。

 殊勲の一本を放った小澤は181センチ83キロと立派な体格を誇り、今春の開幕戦となった日体大1回戦ではリーグ戦初本塁打。その後も二塁打1本、三塁打を2本放ち、この試合を含めた今季の全9安打のうち4本が長打だが「長打はたまたま野手の間を抜けてくれただけです。ホームランについては風のおかげだと思います」と話している。

 というのも「パンチ力よりも、外角のボールや変化球にもしっかりとコンタクトするバットコントロールのほうが自信があります」とのことで、金井信聡監督も「タイミングを外されても、どんな球でも対応できるバッター。コンパクトなスイングでバットの芯に当てるのが得意な選手」と評価している。

 リーグ戦デビューは昨秋。チームの一部昇格とちょうど同じタイミングだった。

「昨春はケガもあって二部のリーグ戦を経験することはできなかったのですが、チームメートから『一部と二部では全然、レベルが違う』と聞いていました」

 小澤も一部の壁にぶつかり、打率.192(26打数5安打)と満足できない結果に終わっていた。そこで、この冬はチームとして「速球に振り負けないスイング力と体作りをテーマにして練習してきました」と振り返る。一日に600スイングをこなし、それでも納得いかないときはさらに振り込んだ。

 また、小澤個人も「チャンスの場面で『一球で仕留めること』を課題にし、苦手なコースだろうが全部、ヒットにできるように振り込んできました」と隙のない打撃を目指してきた。その成果は今春の数字に表れており、第4週を終えて打率.333(27打数9安打)。明治学院大の中軸の一人として申し分のない成績となっている。

守備上達は高1冬が転機


 小澤のもう一つの長所といえるのが一塁守備だ。「中学時代は守備がまったくダメで、桐光学園高では野呂雅之監督にめちゃくちゃ怒られていました。全体練習が終わった後も居残りで守備練習をやっていたくらいです」。転機がやってきたのは高校1年の冬だ。

「先輩でショートを守っていた楠本龍聖さん(立正大)が話しかけてくれて、手取り足取り、一から教えてくださったんです」

 一塁手と遊撃手では動きも違うが「考え方や意識が変わりました。それまでは打球が飛んで来たら、ボールを待って『どうしよう、どうしよう』という気持ちだったのですが、楠本さんに教わってからは『もらった』という感じで、前に出てハンドリングでボールが捕れるようになりました。その冬はティーバッティングもやらせてもらえず、ひたすらノックを受けていたのですが、そのおかげでグラブさばきが身に付いたんです」と意識改革と地道な努力で苦手な守備が得意になった。

 また、「守備が安定したことでバッティングに集中できました」と打撃にも良い相乗効果を与えている。しかし、高校3年の夏はコロナ禍のために甲子園をかけた地方大会が中止。当時は試合どころか日常生活もままならない状況だったこともあり、進学先は自宅からグラウンドやキャンパスに通える地元の明治学院大に決めた。

「入部した時は金井監督の就任2年目で『強いチームを作っていこう』と練習にも熱を入れているときでした。高校時代は不完全燃焼で終わってしまいましたが、その思いが今につながっていると思います」。今後のリーグ戦に向け「(1チームから)2勝するのは大変ですが、粘って勝ち点を取っていきたい」

 個人としては「ホームランの味は格別だったので、もう一本打ちたい。その一本が勝ち点につながれば最高です」と笑った小澤。一部で堂々とした戦いぶりを見せている明治学院大の主力の一人として、充実した時間を過ごしている。

文=大平明 写真=BBM
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