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【高校野球】神奈川県大会決勝進出の相洋 なぜ横浜、東海大相模の2強の壁を突破できたのか

 

先を見据えていたナイン


相洋高は東海大相模高との神奈川県大会準決勝を2対1で勝利。2000年以来の関東大会出場を決めた


 強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強い。相洋高がまたしても、大金星である。

 神奈川県大会準決勝(5月5日)。相洋高は春3度、夏2度の甲子園優勝を誇る東海大相模高を2対1で制した。準々決勝では春3度、夏2度の甲子園V経験のある横浜高に4対3で勝利。神奈川県勢における、春夏を通じて甲子園通算勝利上位2校(横浜高60勝、東海大相模高47勝)を撃破しての超ミラクルだ。

 なお、相洋高は春夏を通じて、甲子園の土を踏んだことがない。2012年から母校・相洋高を指揮する高橋伸明監督は「横浜スタジアムで相模に勝ったのは、自信になる」と話した。

 なぜ、2強の壁を突破できたのか。

 延長10回タイブレークの末、横浜高を下したのは4月30日。準決勝まで中4日あった。高橋監督は言う。

「横浜に勝って、チームとして何か変わるのかな、と見ていたんです。良いのか、悪いのか分からないですが、何も変わっていない」

 感情起伏の激しい高校生である。横浜高からは23年ぶりの勝利。本来ならば浮足立ってもおかしくないが、主将の正捕手・渡邊怜斗(3年)以下、選手たちは冷静だった。決して満足することなく、先を見据えていたのである。

 横浜高との準々決勝は2年生3投手によるリレー。高橋監督は「対応される前に代える」と早めの継投が功を奏し、準決勝も複数投手で乗り切る戦術を示唆していた。

 打線は1回表、準々決勝の勢いをそのままに積極打法で2点を先制した。先発は左腕・中島翔人(2年)。横浜高との準々決勝は先発の右腕・大場智仁(2年)を受けて、4回から救援も2回1失点。高橋監督は「中継ぎであまり良くなかった。もともと先発をしたいと言っていたので」と、起用の理由を語った。

 最速136キロの中島の球種は、ストレートとスライダーのみ。腕を目いっぱい振り、コーナーを丁寧に突き、左打者6人を並べた東海大相模高打線に的を絞らせなかった。高橋監督はこの試合は、三塁ベンチを動かなかった。

「(中島は)あまりに良いピッチングをしたので代えられなかった。行けるところまで行くしかなかった」


「歴史的快挙。自信になる」


 2対0で迎えた9回表一死二塁で、背番号10を着ける二番手・大場にスイッチ。適時打で1点差とされ、なおも一死一、二塁のピンチも後続2人を抑え、2対1で逃げ切った。2年生トリオの一人で、横浜高との準々決勝では6回から好救援した背番号1の右腕・大谷祇人の登板はなかった。

 背番号11の中島は試合後に言った。ベンチで指揮する高橋監督と、思いは同じであった。

「2年生の投手が3人いるので、競い合っています。この試合もつなぐ意識で、行けるところまで行こうと思っていました」

 横浜高、東海大相模高からの勝利について、中島はあらためて感想を述べた。

「歴史的快挙。自信になる」

 相洋高は1996年以来の関東大会出場を決めた。中島は言う。

「神奈川の甲子園常連校に勝ったので、関東大会でも名前負けすることはないです」

 相洋の強さの要因。高橋監督の言葉に尽きる。

「練習試合でも力の差がある相手に対しては、ずっとやってきていましたが、格上なので、気持ち的にも、攻め続けるしかない。格上に勝てたことはうれしいです」

 高校野球において、使い古されたフレーズかもしれないが、最後は「気持ちの問題」。この春、相洋高から学ぶべきことは多い。決勝は今春のセンバツ出場校・慶応高。勢いだけではない。しっかりとした地力が備わっている。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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