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川口和久WEBコラム

巨人が非常事態から脱け出すためのカギは『魔の8回』と原辰徳監督の『平常心』?/川口和久WEBコラム

 

先発に若手、8回は外国人投手では



 巨人が非常事態だ。

 31試合消化時点で借金5の5位。深刻なのは投手陣で、チーム防御率は12球団唯一の4点台となっている。最大の課題は勝利の方程式。抑えは大勢で決まっているが、そこにつなぐ7、8回、特に8回を任せる投手がいない。今は若い投手でやり繰りしようとしているが、なかなかうまくいかず、いつのまにか『魔の8回』と言われている。

 気になるのは選手の表情だ。「打てるものなら打ってみろ」ではなく、明らかに投げるのを怖がっている。こうなると、どうしても「打たれないように、いい球を投げなければ」という気持ちが強くなり過ぎ、自分の力以上を出そうとしてしまう。コースを攻め過ぎて四球を出したり、結果、カウントを悪くして、ストライクを取りにいった甘い球を打たれたり。まさに今の巨人投手陣だ。

 俺がコーチ時代は「いいから、打たれろ」と言った。甘い球も腕をしっかり振れば、そうそう打たれない。打たれても使った監督、コーチが悪いんだからと開き直ってほしかったからだ。ただ、この悪循環の中、その重圧を跳ね返す若手の台頭を期待するのは難しい。はっきり言えば、現時点で8回を若手で試すということに無理があると思う。

 こうなると、先発から誰かを持っていくしかない。それも外国人だ。大勢にいかにつなぐかは最初から課題だった。一番適性があるのは左腕のメンデスかなと思っていたが、今は故障で二軍落ちだ。情報が出ていないが、しばらくかかるのかもしれない。そうなると、まずは復帰してきたロペスかもしれないが、ビーディを回すのも手だと思う。先発では苦戦しているが、真っすぐが150キロ以上出て変化球もある。1イニング限定で生まれ変わる可能性もあるはずだ。

 先発の頭数が、というかもしれないが、そこは、むしろ若手を我慢して起用してほしい。それ以上の最優先課題は、終盤までリードしている、勝てる試合を落とさないこと。それが確立できなければ、このままズルズル行ってしまうかもしれない。

マウンドに行く原監督に違和感


 もう一つ、今の巨人で気になるのは原辰徳監督の動きだ。投手交代で自らマウンドに行く姿が頻繁にあるが、らしくない。言い方は悪いが、もともとコーチ遣いが荒い人で、役割分担を持たせ、結果が出なかったらシーズン中でも配置転換をしてきた。俺は、その上から俯瞰した視点と厳しさもまた、原野球の強さの秘密と思っていた。

 それが今は投手コーチの仕事まで自分でこなそうとしている。シーズン終盤の勝負どころなら分かるが、まだ序盤。しかも、原さんは、もう大監督だから、直接言われると委縮する若い選手も多いだろう。

 打線は中田翔のケガが痛いが、坂本勇人が上がって来た。丸佳浩もこのまま寝ているわけではないだろう。岡本和真大城卓三もいるし、けっして悪いばかりではない。

 俺は原監督の『平常心』も非常事態脱却のカギになると思っている。

写真=BBM
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