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【大学野球】最下位を回避した75度の優勝を誇る名門・東海大 「(負の)歴史を作るわけにはいかなかった」

 

主将の視線は早くも秋へ


東海大は武蔵大3回戦でサヨナラ勝ち[4対3]。勝ち点奪取で一部残留を決めた。主将・森はスタンドで応援する控え部員に対してガッツポーズで、勝利を報告した


 東海大・井尻陽久監督は武蔵大3回戦(5月21日)後に「疲れた……」と3度も口にした。今季最終戦で一部残留が決定。首都大学リーグ最多75度の優勝を誇る名門のピンチ脱出であり、無理もない。

 東海大は常に先手を取るも、2度追いつかれる苦しい展開。1点リードの9回表は、失策をきっかけに、3対3とされる嫌な流れだった。一塁ベンチの森球紀主将(4年・東海大静岡翔洋高)は「ずっと、苦しい状況が続いていましたが、下を見ず、僕がそういう姿を見せないように意識しました」とチームをけん引し続けた。森は9回裏一死からこの日、5本目の中前打で出塁。二死一、二塁から植本拓哉(3年・明石商高)の中越え打で、二走・森がサヨナラのホームを踏んだ。東海大は今季初の勝ち点を挙げ、武蔵大が最下位となった。

 東海大は勝ち点ゼロ同士の直接対決で、負ければ首都大学一部リーグ6位という危機を脱した。東海大は2020年秋、部員の不祥事による、シーズン途中からの出場辞退で史上初の最下位を経験しているが、二部優勝校との入れ替え戦に回ったことはなかった(20年秋は新型コロナ禍で入れ替え戦は開催されず)。

 4勝9敗、勝ち点1。最下位こそ回避したが、リーグ5位は1996年秋以来の屈辱。井尻監督は「学校に申し訳ない。入れ替え戦には行ったことがなく、(負の)歴史を作るわけにはいかなかった」と胸をなでおろした。

 ダイヤモンドを疾走し、ユニフォームを泥だらけにした主将・森は、眠れない日々を過ごしたという。しかし、背番号10を着けるチームリーダーとして、逃げるわけにはいかない。活動拠点である神奈川県平塚市の合宿所では、学年を問わず、対話を繰り返した。

「結果を変えることはできない。この現実と、どう向き合っていくか。打開策については、息詰まった時期もありました。指導者と選手、上級生と下級生をつなぐのは、自分しかいない。野球以外の部分、私生活をもう一度、見直しました。できなければ、グラウンドに立つ資格はない。日ごろの行動が、野球に出る」

 一部残留。試合後は涙を流す部員もいたが、もちろん、目標はそこではない。主将・森の視線は早くも、秋へと向けられていた。

「一戦一戦を大事に、リーグ優勝、日本一。目の前の1試合に集中し、明日以降の練習は、より緊迫感を持って臨んでいきます」

 崖っぷちの武蔵大3回戦は、1球にかける執念があった。心を結集させ、V奪還を誓う。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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