週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

球場がピンク一色に満ち、「楽しい」や「感動」が満ちる1日になった5/20・21「ピンクフルデー」/ホークスイベント

 

プロ野球観戦はいつも非日常の楽しみや興奮、刺激を与えてくれる。ソフトバンクは5月20日、21日の埼玉西武ライオンズとの試合を、今シーズン「タカガール♡デー」から名称変更した「ピンクフルデー」として開催。PayPayドームは普段以上に特別な2日間となった。

満を持してピンクフルデーに改称


両日の入場者全員に「ピンクフルユニフォーム」が配布されスタンドはピンク一色で埋め尽くされた


 ここは、もしや桃源郷か――。

 まず何より壮観なのが2試合とも約4万人の超満員となったピンク一色のスタンドだ。この「ピンクユニフォーム」の歴史のはじまりは2006年の「女子高生デー」だ。若い世代の野球離れに危機感を抱き、何か話題になるものをとアイデアをひねり出した結果、あえて「野球」と縁遠いと思われた女子高生をターゲットにしたイベント試合を行ったのが大ヒットした。

 2014年からは世代を問わず女性の集客を図るイベントとして「タカガール♡デー」を実施。当初は来場した女性ファン全員にピンクユニフォームを配布していたが、2020年からは性別を問わず来場したファン全員にピンクユニフォームを配るようになった。

 そして今年、満を持して「ピンクフルデー」と改称。非日常感やワクワク感を想起させやすいピンクは「タカガール♡デー」の歴史と象徴に加えて「満ちる」という意味のフルをかけ合わせることで、球場がピンク一色に満ちるのはもちろん、選手のパワフルなプレーとともに老若男女問わず全員の「楽しい」や「感動」が満ちる1日になってほしいという想いが込められた新たな愛称に決まった。

今年のデザインは「SPARK」


ロージンバッグの粉が舞っている様子を表現したピンクフルユニフォーム


 ピンクユニフォームは毎回デザインが変わる。今年は、選手が使用するロージンバッグの粉が舞っている様子を表現した「SPARK(スパーク)」デザイン。選手の身近なアイテムをアレンジしてデザインに取り入れることで、ファンと選手を繋ぐユニフォームにしたいとの意味があり、さらにスパークには「弾ける」「広がる」という意味合いもあり、楽しさが弾け、感動が広がっていく1日にしたいという、新名称として始動する今年のピンクフルデーにふさわしいデザインに仕上がっていた。

 また、ピンクフルデー限定のグルメやグッズなど多数のアイテムも用意され、ファンの笑顔を誘い、20日には人気お笑いコンビ「ミキ」、21日にはグローバルボーイズグループのINI(アイエヌアイ)がゲスト来場し、始球式などを行い盛り上げにひと役買った。

 グラウンドや選手たちに目を移しても、やはり鮮やかなピンクが目に飛び込んできた。1〜3塁の各ベースやネクストバッターズサークルがピンク色の特別仕様。審判もピンクの上着と帽子を着用した。両チームのダグアウトを見れば、ベンチのみならずブルペンに通じる電話や扇風機といった細かな部分までピンクに装飾するこだわり。

ピンクリボンユニフォームを選手は特別に着用


鳥越裕介氏から「ピンクリボン運動」の先陣役を引き継いだ中村晃。ピンクフルデー2戦目の21日の試合では3安打1打点の活躍でお立ち台に上がった


 そしてソフトバンクの選手たちも、この2日間はピンク色のラインが入ったユニフォームを特別に着用した。これは「ピンクリボンユニフォーム」と言い、2019年のタカガール♡デーから着用している。帽子のチームロゴの横にはピンクリボンの刺繍が施されている。

 このマークは、乳がんの撲滅や早期発見の啓発・推進を呼びかける「ピンクリボン運動」のシンボル。前身イベント時代も含め、この「ピンクフルデー」はファンに喜んでもらうことだけが目的ではなく、大切なメッセージが込められているのだ。選手着用のユニフォーム以外にも各塁ベースやネクストバッターズサークルには「ピンクリボン」のマークがあしらわれている。

 この活動は、かつてソフトバンクでコーチを務めた鳥越裕介氏が2008年に愛妻を乳がんで亡くし、「自分のような悲しくつらい思いをほかの人にしてほしくない」という思いを球団にもちかけたことで、ピンクリボン運動の啓発活動がこの試合日に合わせて行われるようになった。乳がん検診を呼びかけるリーフレットが配布されるほか、ドームの外には乳がん検診車も用意される。

これを機に検診に行ってもらいたい


2008年に鳥越裕介氏が始めた「ピンクリボン運動」は、中村晃が意志を引継ぎ今年で15年目となった


 鳥越氏がソフトバンクを退団した後の2018年からは中村晃が先陣役を引き継いできた。

「鳥越さんが奥様を亡くしたときは、僕をはじめ選手全員が本当にショックを受けましたし、その時の気持ちは今もはっきりと覚えています」

 中村晃は啓発活動の先頭に立つほかに、自身の成績と連動した寄付も行っている。その中村が21日の試合でお立ち台に上がり「乳がんで苦しむ人、亡くなる人が1人でも少なくなってほしいという思いからピンクリボン運動の活動をしています。まだ検診に行かれていない方は、これを機に検診に行ってもらいたいです。この場でこうやって呼びかけるためにお立ち台に神様が上げてくれたのかなと思うのでみなさんよろしくお願いします」と話した。

 プロ野球をはじめ、スポーツを応援する「楽しい」「感動」は人生を豊かにしてくれる。ただ、そこにとどまらない想いがこの鮮やかなピンク色に込められていることも忘れてほしくない。

文=田尻耕太郎 写真=福岡ソフトバンクホークス
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング