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オリックスの救世主 他球団が「森友哉より厄介な打者」と警戒する成長株は

 

クリーンアップに不可欠な存在


中心打者として力強い打撃で打線をけん引している頓宮


 リーグ3連覇を狙うオリックスは、昨オフにポスティングシステムを利用してレッドソックスに移籍した吉田正尚の穴をどう埋めるかが懸案事項だった。

 西武から森友哉がFA移籍してきたが、捕手という守備に神経を注ぐポジションで打撃に大きな負担を掛けられない。2021年の本塁打王・杉本裕太郎は春先から本塁打を量産したが、左ふくらはぎの筋損傷で5月上旬に3週間以上の戦線離脱。ポイントゲッターを失う危機で、期待以上の活躍を見せているのがプロ5年目の頓宮裕真だ。54試合出場でリーグトップの打率.346、6本塁打、23打点をマーク。クリーンアップに不可欠な存在となっている。

 岡山理大付高では1年秋から「四番・捕手」に定着。高校3年間で甲子園と縁はなかったが、強打の捕手としてプロの評価は高かった。亜大に進学し、東都リーグ戦通算14本塁打をマーク。オリックスからドラフト2位で指名されると、強打を生かすために入団と同時に三塁に転向した。開幕戦で球団の新人では62年ぶりのクリーンアップに抜擢されるなど期待が大きかったが、三塁の不慣れな守備が影響し、打撃も精彩を欠くように。故障も重なり一軍に定着できず、捕手再転向を志願した。新人では異例の行動を、頓宮は20年3月の週刊ベースボールでこう振り返っている。

「夢だったプロに入れましたし、そこで活躍できる可能性がある三塁に挑戦しました。でも、開幕したら打てずに二軍に落ちてケガもした。ここで終わりたくないという思いが一番だったんです。僕は野球を始めたころから、ずっとキャッチャーをやってきた。いつクビになるか分からない中で、後悔のない野球人生にしたいと思ったんです。言い方は悪いですけど、自分の中では『サードを“やらされている”』という感覚がずっとあったのが正直なところ。そういう気持ちでサードをやって結果が出ないのなら、後悔をしないようにキャッチャーで勝負しようと。それでダメならダメであきらめもつくと思って」

 捕手のほか、チーム事情に合わせて一塁、指名打者でも出場。昨年は自己最多の81試合に出場し、11本塁打をマークした。球界を代表する強打の捕手・森が加入した今年も捕手へのこだわりを口にしていたが、今年は捕手で一度も出場せず、一塁のレギュラーで試合に出続けている。

広角に快打を飛ばす打撃


6月15日の阪神戦では9回に同点ソロを放った


 パンチ力はあるが、確実性に欠けるのが頓宮の課題だったが、今年はイメージがガラッと変わった。外角のボール球を強引に引っ張ろうとして空振りする場面が少なくなり、逆方向にも安打が増えている。昨年は右方向の安打が全体の11.9パーセントだったが、今年は27.6パーセントと大幅に増えている。

 他球団のスコアラーは、「左右は違うけど、吉田正尚と重なりますね。手首のリストをうまく使って広角に安打を打てるようになっている。一過性の勢いで打っているのではなく、崩れない打ち方をしている。ボール球を振らなくなったので、配球に神経を使う。森、杉本より厄介な打者です」と警戒を強める。

 確実性が格段に上がったが、アベレージヒッターに特化したわけではない。「四番・一塁」でスタメン出場した6月15日の阪神戦(甲子園)。4回二死二塁で先制の右前適時打を放つと、1点差を追いかける9回一死で守護神・湯浅京己の真ん中に入ったフォークを振り抜き、左中間に5号ソロ。起死回生の一発で試合を振り出しに戻すと、杉本の10号勝ち越し左越えソロで、鮮やかな逆転勝利を飾った。17日のヤクルト戦(神宮)も3回一死二塁で、左腕・石川雅規の直球を左翼席に運ぶ6号2ラン。最近8試合で5本塁打と量産体制に入っている。

 捕手にこだわったことは決して遠回りではない。自身の野球人生にストイックに向き合ったからこそ今がある。リーグ3連覇のキーマンだ。

写真=BBM
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