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2021年に先発で11勝も今季未勝利…復活期待される「巨人の左腕」は

 

最も輝いたプロ3年目


終盤戦に向け、一軍の力になることが期待されている高橋


 投げている球は一級品だけに、ファーム暮らしの現状がもどかしい。今季4試合登板で0勝1敗、防御率6.35と力を出し切れていない巨人高橋優貴だ。

 140キロ台の球速以上のキレを感じる直球にスライダー、スクリューをまじえて凡打の山を築く。高橋が最も輝いたのがプロ3年目の21年だった。開幕から先発ローテーション入りし、3、4月は5試合登板で5勝0敗、防御率1.80と圧巻の内容で自身初の月間MVPを受賞する。疲れが出た夏場以降は失速したが、リーグ最多の26試合に先発してチームトップの11勝は立派な数字だ。特に阪神戦は4勝0敗、防御率1.45とキラーぶりを発揮した。

 制球が抜群に良いわけではない。同年はリーグワーストの61与四球だったが、攻め気を常に持ち、走者を背負っても決定打を許さない。このときはマウンド上の表情に自信がみなぎっていたが、さらなる飛躍が期待された翌22年は試練を味わう。左肘痛の影響で出遅れて開幕はファームスタート。春先に1軍昇格したが救援、先発で計10試合登板にとどまり、1勝のみに終わった。

球団レジェンドOBの分析


 球団OBの堀内恒夫氏は週刊ベースボールのコラムで、輝きを失った高橋を気に掛けていた。

「高橋のような軟投派でストライクが入らないようじゃ、打者に向き合う以前の問題。先頭打者の四球がこうも続けば、周りから『制球難』を散々指摘されていたことは想像に容易い。だからこそ、ストライクを取ることに必死になっているはずだ。しかし、その思いが逆に腕を振ることを忘れさせているように感じる。高橋が得意とするスクリューボールも手先で操作しているから、打者のタイミングと合ってしまう。『恐怖心』ゆえに、ボールは手につかず、自分の意がボールに伝わらない。マウンドを降りたあとも『あそこでどうやって、何を投げたか』ということすら覚えていないかもしれない。怖さが顔を出すと、投球以前の精神状態になる」

「高橋のような精神状態になると、昔は『放牧』と呼び、多摩川グラウンドで、フェンス沿いを歩くことだけをやらされた。期間は設けられず、ただ歩くだけの毎日。目的は頭から野球のことを消すこと。しばらくすると、投手の本能が顔を出して無性に投げたくなり、首脳陣に『投げさせてください』とお願いに行く。首脳陣も本人が心の底から投げたいという気持ちが湧いてくるまで指導を我慢する。本人に戦闘意欲が戻って、初めて技術的なことを教えられるのだ」

ドラフト同期の戸郷と両輪で


 昨年9月に左肘の手術を受けて育成契約に。今年4月10日に支配下に復帰したが、まだ本来の状態には程遠い。先発でチャンスを与えられたが、4月28日の広島戦(東京ドーム)は3回5安打2失点で降板。5月3日のヤクルト戦(東京ドーム)は2回途中5安打3失点KOと早々とマウンドを降りた。6月6日のオリックス戦(京セラドーム)も3回途中4安打2失点と不安定な内容で、翌7日に登録抹消された。

 信頼を取り戻すためには、ファームで結果を出すしかない。7月1日のイースタン・日本ハム戦(ひたちなか)に先発して5回4安打無失点の粘投。4四死球を与えたが要所を踏ん張り、ファーム降格後は11イニング連続無失点となった。

 ドラフト1位左腕の高橋は、ドラフト6位入団でエースに上り詰めた戸郷翔征と同期入団だ。左右の両輪として活躍する未来予想図を期待している巨人ファンは多いだろう。26歳でこれから投手として味が出てくる。左腕を思い切り振り、マウンド上で躍動する姿を取り戻せるか。

写真=BBM
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