週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

ドラフト8位からブレーク 佐藤輝明、中野拓夢、村上頌樹と同期入団の「防御率0点台右腕」は

 

登板を重ねるごとに成長


3年目の今季、中継ぎとして成長を果たしている石井


 リリーフに求められるのは球の速さ、変化球の質、制球力だけではない。失敗しても引きずらず、ピンチでも力を発揮できる精神的な強さが大きなウエイトを占める。阪神はリリーバーに誤算が相次いだ。守護神の湯浅京己がファーム調整中で、セットアッパーの浜地真澄も本来の状態を取り戻せない中、救援で奮闘する阪神・石井大智は登板を重ねることで成長しているように感じる。

 象徴的な登板が6月30日の巨人戦(東京ドーム)だった。同点の9回に登板すると、先頭打者のルイス・ブリンソンに三塁線を破られる二塁打、続く秋広優人を申告敬遠で無死一、二塁と一打サヨナラのピンチを迎えた。セルフコントロールが難しい局面だが、石井は冷静だった。四番の岡本和真をフォークで空振り三振に仕留めると、大城卓三をシンカーで二ゴロ併殺打に切り抜けた。

 思い出されるのは、4月12日の巨人戦(東京ドーム)だ。今季初先発で同期入団の村上頌樹が7回まで走者を1人も出さない完全投球で大記録達成の期待が高まったが、疲労を考慮して8回から石井がマウンドに。だが、先頭打者の岡本に同点アーチを被弾。チームは勝利したが、村上の白星を消した試合後の表情は複雑だった。悔しさはグラウンドで晴らすしかない。翌13日にも同戦に登板して1回無失点。岡本を中飛に打ち取った。

黄金ドラフトで8位


 石井は黄金ドラフトの一員だ。1位・佐藤輝明、2位・伊藤将司、5位・村上、6位・中野拓夢とチームの中心選手として活躍するタレントがそろう中、ドラフト8位で入団した。秋田工高専に進学し、NPB史上唯一の高等専門学校卒業選手という異色の経歴を持つ右腕は、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスで能力を高めて阪神へ。身長175センチと上背はないが最速153キロの直球、シンカー、スライダー、カットボール、カーブを小気味よく投げ込む。

5月11日のヤクルト戦ではプロ初勝利をマークした。左は岡田彰布監督


 1年目の21年から開幕一軍入りして18試合に登板。昨季は新型コロナウイルス感染の影響で18試合登板にとどまったが、防御率0.75と前年の6.23から大幅に良化した。今季は5月11日のヤクルト戦(甲子園)で同点の8回に救援登板して1回無失点に抑え、プロ初勝利をマーク。翌12日に腰痛で1カ月戦線離脱したが、6月15日に復帰以降も安定した投球を続けている。21試合登板で1勝7ホールド、防御率0.83。今季の目標としている40試合登板は達成可能な数字だ。

リリースの瞬間も80%の出力で


 勝負の3年目に向け、昨オフに手応えをつかんだことを週刊ベースボールのインタビューで明かしている。

「今まではリリースの瞬間に100%の力が必要だと思っていたんです。それが足を上げてから投げ終わるまで80%の力感で投げていき、リリースの瞬間も80%の出力で投げていく。そうすると100%で投げた球よりも伸びのある真っすぐになっている、という感じです。つまり線でとらえたときに、ホームベース上でボールが伸びた感じがしました」

「僕は工業系高専出身で物理が得意でした。ピッチングを“力積”で考えると、パワーを最大限に出すには『力×時間』なんです。一人の人が持っているパワーは決まっていますが、最大限にそのパワーを出すのは時間なんです。その時間が長ければ長いほど多くのパワーを引き出せるんです」

「プレートから右足を離さず、後ろ軸にパワーをためながら、左足に重心をうまく伝えていく。その時間が長ければ長いほど、リリースの瞬間に下半身のパワー、エネルギーがボールに伝わるということだと思っています。今はそれで投げられています」

 新球のフォークも精度が高く、投球の幅が広がっている。ペナントレースは折り返しを過ぎ、ここから真価が問われる。阪神は守り勝つ野球で、救援陣が命運を握っている。もちろん、石井も活躍してもらわなければ困る投手だ。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング