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都市対抗2023

【都市対抗2023】起死回生の同点適時三塁打 初戦で難敵下した明治安田生命の“安打製造機”福岡高輝

 

大会に懸ける強い思い


明治安田生命・福岡は川越東高、早大を経て入社4年目だ[写真=BBM]


 第94回都市対抗野球大会は7月14日、東京ドームで開幕した。熱戦の12日間。栄光の黒獅子旗をかけた熱戦をリポートしていく。

 3日目(7月16日)の第2試合では明治安田生命(東京都)が西部ガス(福岡市)と対戦。投手を中心にした守りの野球を持ち味としている両チームの激突は互いに一歩も譲らず、今大会初の延長タイブレークに突入。この熱戦を、10回表に2点を勝ち越した明治安田生命が制し、西部ガスを3対1で振り切った。

 大きな仕事を成し遂げたのは三番で起用された福岡高輝(早大)だ。1点を追う明治安田生命は9回表、二死走者なしまで追い込まれたが、ここで新城拓(中大)がレフトフェンス直撃のツーベースを放ってチャンスメーク。続く福岡は「この回が始まるときに新城さんから『お前につなぐから』と声を掛けられていたので、なんとか打ってやろうと思っていました」と強い気持ちを持って打席に入った。

 しかし、この試合ではここまでの4打席で2三振を喫し、ヒットはなし。「昨年もJR東日本の補強選手で出場したのですがノーヒット。それだけに、この大会に懸ける思いも強かった分、力んでしまっていました」。しかし、9回の打席では「相手ピッチャーも苦しいところだと思ったら、客観的に自分を見ることができてパッと力が抜けたんです」と力みが消えていった。そして、ややアウトコースの高めの真っすぐを振り抜いた打球はバックホームに備えて前めに守っていたセンターの頭上を鋭く抜けていく、起死回生の同点適時三塁打となった。

「打った瞬間、芯を食っていたので、センターの頭を越えるだろうと思いました。気持ち良かったですし、武者震いと言うんですかね。足が震えていました」

 三塁ベースに滑り込んだあとは「あまりやるタイプじゃないんですけれど、自然と出てしまいました」と大きなガッツポーズも。岡村憲二監督(専大)も「福岡はチームの柱ですし、この試合でもよく打ってくれました。すごい場面でしたが、日頃の努力が上回ったのだと思います」と手放しで褒めたたえた。

オフシーズンのティー打撃


 福岡は早大時代、強打の三塁手としてならし、東京六大学で76安打をマーク(打率.304、5本塁打、34打点)。2018年には侍ジャパン大学代表(東京六大学選抜チームで出場)として、世界大学選手権でプレーしたヒットメーカーである。

「昨季は長打を打てる選手も目指しましたが自分には合っていませんでした。それで今季は自分のスタイルである打率を求めて、冬のオフシーズンからひたすらティーバッティングをしてきたんです。しっかりとボールにコンタクトできるように同じコースのボールを20球、同じネットの場所へ飛ばせるように狙って打っていました」

 今季は都市対抗東京地区二次予選で打率.429をマーク。主軸の一人として活躍し、チームとして初の第1代表での本戦出場に貢献した。そして、都市対抗本大会での沈黙を破った殊勲の一打は、いかにも福岡らしい鋭いライナーだったが「狙っていたわけではなくて、体が反応しました」と振り返っており、逆に言えば意識していなくても、しっかりと引き付けて打球を捉えられるバッティングが身に付いているという証拠だろう。

 初戦で難敵を下した明治安田生命。次戦に向けて、福岡は「目の前の一戦を勝っていくだけ。補強選手もすごくチームに馴染んでいて、できるだけ長く一緒にプレーしていたいのでこれからも勝ち上がっていきたいです」と抱負を語った。福岡のバットに、これからも目が離せない。

取材・文=大平明
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