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巨人・浅野翔吾と同期入団 阪神の高卒1年目左腕に「近未来のエース」の高評価が

 

ピンチで動じない精神的な強さ


フレッシュオールスターでは全ウエスタンの先発を務めた門別


 18年ぶりのリーグ優勝に突き進む阪神。8月19日のDeNA戦(横浜)で逆転勝利を飾り、マジックを27に減らした。強さの要因の一つが質、量共に充実した先発投手陣だろう。

 現役ドラフトでソフトバンクから加入した大竹耕太郎がチームトップの8勝をマーク。大卒3年目でブレークした村上頌樹、左腕エースの伊藤将司も7勝と安定した投球を続けている。本格派右腕の才木浩人西純矢は成長著しく、救援から先発に配置転換されたジェレミー・ビーズリーも存在感を示している。2021、22年と2年連続最多勝に輝いた青柳晃洋、先発ローテーションで長年稼働していた西勇輝の両右腕は本来の状態ではないが、このまま終わるわけにはいかない。チーム内のハイレベルな争いが底上げにつながっている。さらに、昨年4月に左肘内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けて、リハビリからの復活を目指す高橋遥人も控えている。復帰したときは豪華絢爛の投手陣が完成することになり、楽しみだ。

 ファームにも逸材が。将来の阪神を背負う左腕として嘱望されているのが、高卒1年目左腕の門別啓人だ。

 東海大札幌高で甲子園出場の夢が叶わなかったが、最速150キロの直球にスライダー、チェンジアップ、カーブ、ツーシームを操り、世代を代表する左腕として名を轟かせていた。阪神にドラフト2位で入団後、ウエスタン・リーグで早くもその片鱗を見せている。公式戦初先発となった5月10日の広島戦(由宇)で5回3安打1失点。17日の中日戦(ナゴヤ)で初勝利を挙げた。9試合登板で2勝2敗2セーブ、防御率2.68。7月18日のフレッシュオールスターではウエスタンの先発に抜擢され、初回無死満塁のピンチを招いたが、動じることなく後続を抑えて無失点で切り抜けた。

 他球団のスコアラーは「高卒1年目とは思えないよね。制球力もきっちりしているし、ピンチで動じない。阪神の左腕エースで活躍した井川慶と重なる。このまま順調に育てば、将来は一軍の主力投手として大成する可能性を秘めている」と評価する。

こだわっているのは球質


 一軍で通用する投手になるために、門別がこだわるのが球質だ。今月に週刊ベースボールのインタビューで、「入団したときの僕のボールの球質とほかのプロの先輩方の質はまったく違いました。その球質にこだわってずっとやっています。打者やキャッチャーから見て、怖さを感じない投手というのは、ボールが見えやすいということだと思っています。それがボールの質を高めることかなと。だから、怖さを感じさせられるようにするにはどうしたらいいのかを考えて投球フォームをつくり上げていっています」と明かしている。

 ウイニングショットの直球を磨くことが、投球の生命線になる。

「高校のときは、球速、速さのみをすごく求めていました。しかし現在は、球速は出ていないけど、ファウルが取れたりとか、空振りが取れるストレートを身に付けたいと思い始めました。打者の反応で気づかされました。いくら速くても、見えやすかったら打ちやすいんだろうな、ということに気がついたんです。そして、まずはリリースが見えにくい投球フォームをつくれば、自ずと球質も上がり、球速も上がるのではないのか、と考えました」

井川と多い共通点


かつて阪神の左腕エースとして先発陣の軸となった井川


 03年に20勝をマークするなど阪神の絶対的なエースとして活躍した井川慶も水戸商高で甲子園出場の経験がなく、ドラフト2位で阪神に入団した。大型左腕、プロ入りまでの歩み、自分を俯瞰して分析できる洞察力、マイペースな性格も含めて門別は井川と共通点が多い。

「自分のプランの中では、今年中に一軍に上がって登板するという考えがあるのですが、ここまでは順調に来ていると思います」

 阪神の未来は明るい。近未来のエース候補の雄姿を一軍で見られる日は、近いかもしれない。

写真=BBM
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