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2023夏の甲子園

【2023夏の甲子園】高校野球に新時代到来の予感 慶応が107年ぶりの頂点

 

コロナ禍前と変わらぬ盛り上がり


仙台育英を8対2で下して夏の頂点に立った慶応[写真=牛島寿人]


 夏の甲子園にいつもの光景が戻り、そして今大会はいつも以上の環境が整っていた。

 新型コロナウイルスの影響により2020年に中止となった選手権大会は21年から観客数に上限を設けるなどして開催されてきた。常に制限のかかった状態だったが今年5月に感染法上の分類が5類になったことに伴い、主催者の日本高野連と朝日新聞社は対策ガイドラインを撤廃。開会式には全選手が参加し土集めや声出し応援も解禁され、コロナ禍前と変わらぬ盛り上がりを見せた。

 さらに今大会からは暑さ対策としてクーリングタイムを導入。ベンチ裏には送風機、スポットクーラー、保冷剤入りのアイスベストなどを用意し、5回終了時に10分間のインターバルを取った。ほかにも選手、指導者双方にとってうれしいことにベンチ入り人数が18人から20人に増えた。投手の負担軽減や采配の幅を広げる変更に選手はノビノビとプレー。開幕日の第3試合で浦和学院(埼玉)は19人が、準々決勝では花巻東(岩手)の20人が出場した。

 昨年に仙台育英(宮城)が東北勢として悲願の初優勝を果たした影響もあってか準々決勝に八戸学院光星(青森)、仙台育英、花巻東が進出。ベスト8に東北勢3校が入るのは史上初の快挙だった。花巻東・佐々木麟太郎と広陵(広島)・真鍋慧の注目スラッガーは逆方向へ力強い打球を飛ばし、完成度の高い本格派、沖縄尚学(沖縄)・東恩納蒼と徳島商(徳島)・森煌誠は評判どおりのハイレベルな投球を披露した。

試合以外の面でも注目を集めた慶応


 激戦を制して8月23日の決勝に進んだのは仙台育英と慶応(神奈川)の2校。夏連覇か107年ぶりの頂点か。センバツ初戦でタイブレークの熱戦を繰り広げた両校の再戦は、陸の王者がリベンジに成功した。

 初回、慶応は丸田湊斗の先頭打者本塁打で先制すると大応援団の後押しを受けて仙台育英の強力投手陣に襲いかかる。打線が5回に5得点のビッグイニングを作り、完全に試合の流れを引き寄せた。投げては先発の鈴木佳門から準決勝で完封勝利を挙げたエース・小宅雅己へつなぐリレーで逃げ切りに成功。一度もリードを許すことなく昨夏の覇者を振り切った。

 8対2で勝利し、優勝を果たした森林貴彦監督は「多くの方々に応援されて支えてもらって今日の試合がありますし、今日の結果があります。本当にありがとうございます。100人を超える大所帯でベンチに入るのは20人で、ほかにいろんな役割を全うしてくれて全員の勝利です」と感極まった様子でインタビューに答えた。

 今大会の慶応は試合以外の面でも注目を集めていた。「エンジョイ・ベースボール」を掲げて選手の自主性を重んじ、頭髪は自由で練習時間は短い。選手は監督を「森林さん」と呼ぶ。

「ウチが優勝することで高校野球の新たな可能性とか多様性とか、そういったものを何か示せればいいなと思って日本一を目指して、常識を覆すという目的に向けて頑張ってきたので、何かウチの優勝から新しいものが生まれてくるということがあるのであれば、それは本当にうれしく思いますし、高校野球の新しい姿につながるような勝利だったのではないかなと思います」と森林監督。高校野球の新時代到来は近い。

文=小中翔太
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