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【大学野球】20年ぶりの快挙を目指す明大 田中武宏監督は「『チーム上田』としての成長ぶりを見てほしい」

 

「4連覇に向けて頑張りたい」


東京六大学野球連盟は9月6日、懇親会を開催。6校の主将と指名選手が秋のシーズンへの意気込みを語った[前列左から明大・上田主将、法大・今泉主将、慶大・廣瀬主将、早大・森田主将、立大・西川主将、東大・梅林主将。後列左から明大・蒔田、法大・内海、慶大・宮崎、早大・熊田、立大・池田、東大・松岡]


 東京六大学秋季リーグ戦は9月9日、明治神宮野球場で開幕する。開幕を3日後に控えた6日、同連盟の役員、監督、選手が出席しての報道各社との懇親会が行われた。

 最大の話題は、明大の4連覇である。1937年春から38年秋にかけて達成して以来、85年ぶりの挑戦。東京六大学では過去に6度(法大3度、明大・立大・早大は各1度)の4連覇があり、2002年春から03年秋かけての早大以来、20年ぶりの快挙がかかっている。

 明大の主将・上田希由翔(4年・愛産大三河高)は決意を述べた。

「春はリーグ戦を通して成長できるチームを目指してきましたが、秋は圧倒的にリーグ戦を勝とう、と。(夏のキャンプから秋の開幕までに)完璧なチームづくりをしてきました。ラストシーズンなので、悔いのないように、4連覇に向けて頑張りたいと思います」

 2020年から母校を指揮する田中武宏監督は「『チーム上田』としての成長ぶりを見てほしい。(主将・上田は)どこに出しても恥ずかしくない学生です。チームをまとめてくれる」と、全幅の信頼を寄せている。田中監督が就任以降、公家響(大阪ガス)、丸山和郁(ヤクルト)、村松開人(中日)が明大のキャプテンナンバー10を背負ってきた。かつて37年、明大を率いてきた島岡吉郎元監督からの教えである「人間力野球」を、上田も継いでいる。

「人間力野球」とは、野球の技術力向上の前に、人としての精神力を磨くこと。島岡元監督の教え子である田中監督は「グラウンドで一生懸命プレーするのは当たり前のことです」と、全部員が寝食をともにする島岡寮での生活を、徹底的に突き詰めてきた。常日ごろからの細かい積み重ねが、粘りのプレーにつながる。それが、伝統の島岡御大の野球である。

「後継者」として期待する宗山


 上田は8月の取材時に、こう語っていた。

「チームが優勝を目指すことも大事ですけど、後輩に受け継ぐことも4年生としての役割。結果だけでなくて私生活、取り組みの部分で何か一つでも残せていけたらと思います」

 上田が主将の「後継者」として期待するのが、宗山塁(3年・広陵高)である。3年春までにリーグ戦通算76安打。侍ジャパン大学代表にも2、3年時と名を連ねた不動の遊撃手は「2024年のドラフト超目玉」と言われている。

 上田は後輩たちへの期待感を語ってくれた。

「自分がとやかく言うまでもなく、今の明治のメンバーは皆、任せられる。それでも満足しない宗山のような意識レベルの高い選手は、もっと上に行ける。そういう部員が一人でも増えれば、もっと強くなると思います」

 宗山自身も最終学年を見据えて過ごしてきた。明大をけん引する自覚と責任を持っている。

「丸山さん、村松さん、希由翔さんと3人の主将を見てきて、来年は自分たちの代になります。いきなり、新チームになってから『やれ!』と言われても難しいので、今の段階から最終学年をイメージしながら、先輩方の良い伝統をつなげるように意識しています。生活部分が疎かになると、チームの根幹が揺らいでくる。時代は変わってきていますが、まずは、上がしっかりしないといけません」

 田中監督には4連覇でなく、別の視点がある。

「上田のチームなので……。この秋は『チーム・上田』として春秋連覇が目標になる」

 宗山は大学入学から3年間、お世話になった4年生へ「恩返し」の秋となる。

「最後に『良いチームだったな』と振り返られるような、秋のシーズンにしたい。希由翔さんを胴上げして終わりたいです」

 昭和、平成、令和とつながれた島岡御大のイズムが浸透している明大に、死角は見当たらない。だが、他の5校も明大のリーグ4連覇阻止へ、真っ向から激突してくる。9月6日の懇親会は約90分、和気あいあいとした空気であったが、9日の開幕からは一気に戦闘モードに入る。最終週の早慶戦まで、天皇杯をかけた8週にわたる熱戦から目が離せない。

文=岡本朋祐
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