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雨のち晴れがちょうどいい。

「寮の門限を破っても怒られない秘策がありました」元中日-西武-千葉ロッテの名外野手・平野謙さん/著書『雨のち晴れがちょうどいい。』

 

電話のせいでばれた


表紙


 現役時代、中日ドラゴンズ西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズで活躍した外野守備の名手・平野謙さんの著書『雨のち晴れがちょうどいい。』が発売された。
 
 両親を早くに亡くし、姉と2人で金物店を営んでいた時代は、エッセイストの姉・内藤洋子さんが書籍にし、NHKのテレビドラマにもなっている。

 波乱万丈の現役生活を経て、引退後の指導歴は、NPBの千葉ロッテ、北海道日本ハム、中日をはじめ、社会人野球・住友金属鹿島、韓国・起亜タイガース、独立リーグ・群馬ダイヤモンドペガサスと多彩。そして2023年1月からは静岡県島田市のクラブチーム、山岸ロジスターズの監督になった。

 これは書籍の内容をチョイ出ししていく企画です。今回は中日の寮生活の話です。



 当時、大学出は2年間寮生活と決まっていて車も禁止だったのですが、僕はすぐ確か59万円のトヨタの中古車を買って、休日のたびに出掛けていました。車は寮の近くに路駐です。寮長の岩本信一さんにはバレていたと思いますが、ほかにも乗っているヤツはいたし、特に何も言われませんでした。

 寮は外泊禁止で門限もありましたが、僕は気にせず遊んでいました。地元ですし、高校、大学時代の友達もいます。当時、姉が犬山の家を出ていて、誰も住んでいなかったので、時々、様子を見に行き、ついでに泊まったこともありました。

 岩本さんは、ものすごく懐の深い人で、門限に遅れても、甘い大福をお土産に買ってきたら笑って許してくれました。ただ、さすがに朝帰りや外泊はそうもいきません。

 ここで考えた、怒られない秘策があります。部屋のカギは、自分と、あとは寮長室にスペアキーがありました。時々、門限を過ぎても帰ってきていないヤツの部屋を寮長が確認で開けたりしたのですが、僕はこのスペアキーをこっそり拝借し、自分で管理していました。だから寮長も部屋をのぞけない。外から声を掛けられたとしても、あとで「寝ていました」と言い張ればいいだけです。

 一度だけ失敗したのは電話が原因でした。昔はスマホなんてないし、電話も貴重品で、寮も共同電話だけで個人は禁止でしたが、僕は勝手に部屋に取り付けちゃった。工事もあったのに、われながら大胆です。

 ただ、2年目からの寮長の坪内道典さん、僕らはツボさんと呼んでいたのですが、岩本さんと違って、かなり細かかった。何度か門限破りで怒られ、ツボさんにも大福を渡して許してもらおうとしたのですが、「僕は受け取れません」と真顔で言われちゃいました。

 それでもスペアキー作戦は継続していましたので、運悪く出くわせない限りバレなかったのですが、ある日、いつものように門限を破って足音を忍ばせて帰ってきたら、部屋の前にツボさんが怖い顔で立っていた。「なんでいないのが分かったんですか」と聞いたら、「部屋でずっと電話が鳴っていたぞ」って。

 そりゃばれますよね。
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