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【大学野球】開幕戦で見せた主将の闘志あふれるプレー 明大として85年ぶりの4連覇へ上田希由翔が「人間力野球」を体現

 

意表を突くセーフティーバント


明大の四番・上田は相手の意表を突くセーフティーバントを仕掛け、一塁へヘッドスライディングした[写真=矢野寿明]


 誰もが、目を疑った。東大1回戦(9月9日)で明大が2対0でリードした5回裏二死三塁、打席には四番・上田希由翔(4年・愛産大三河高)が入った。追加点が欲しい場面。リーグ歴代16位タイ62打点を誇る左のスラッガーは何と、セーフティーバントを仕掛けてきた。

「ビックリしました。サインは出していません。おいおい、と(苦笑)。どうしても1点が欲しかったのか……。試合前の打撃練習から(全体的に)湿りがちでしたので」(明大・田中武宏監督)

 上田はここまで2打数無安打。東大の先発右腕・松岡由機(4年・駒場東邦高)にタイミングが合っていなかった。上田は一塁方向の絶妙なコースへ転がす。「意表を突かれた感じ(苦笑)。自分でベースを踏みにいこうかと思いましたが、ベースカバーのほうが早いと思いました」。東大・松岡は一塁ベースに入った二塁手にトス。さらに、驚愕のプレーだ。50メートル走6秒0の俊足・上田は決死のヘッドスライディング。あと一歩及ばなかった。

50メートル走6秒0の俊足も一歩及ばずアウト。ユニフォームを泥だらけにして思わず、苦笑いを浮かべていた[写真=矢野寿明]


 勝利への執念。チームメートも、目を丸くさせた。先発して6回無失点で、通算13勝目を挙げたエース右腕・村田賢一(4年・春日部共栄高)は「3年まででしたら、考えられないプレー。上から目線ではありませんが、引き出しが増えたな、と。感慨深かったものがある」と、主将のけん引力に驚きを隠せなかった。

 上田は8回裏無死三塁からニゴロ。三塁走者が生還する貴重な3点目を挙げた。63打点はリーグ歴代14位タイで、明大で歴代トップの中村豊(元阪神ほか)に並んだ。あの言葉を思い出した。今春のリーグ戦前、上田は「なりふり構わず」と口にしていた。つまり、是が非でも出塁が必要な場合は、手段を選ばない、と公言していたのである。

 明大は3対0で白星発進した。開幕戦で見せた主将の闘志あふれるプレー。明大として85年ぶりの4連覇へ、伝統の「人間力野球」をチームリーダー自らが体現したのであった。

文=岡本朋祐
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