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【高校野球】「無理に笑顔を作ったら気持ち悪いぞ!」 慶応があらためて目指す「KEIO日本一」

 

新チームが県大会初戦でコールド勝利


慶応高は神奈川県大会2回戦[対舞岡高]を22対1で勝利。今夏の甲子園で全国制覇へ導いた森林監督[左から2人目]は試合後、新チームについて語った


 新チームの慶応高のテーマは明確である。

 神奈川大会初戦(2回戦、9月10日)で、舞岡高に22対1の5回コールド勝利を収め、3回戦に進出した。

「新チームの公式戦初戦の勝利を、素直に喜びたいと思います」(森林貴彦監督)

 仙台育英高(宮城)との夏の甲子園決勝で、107年ぶり2度目の全国制覇を遂げたのは8月23日。25日に新チームがスタートし、県外の3校ほどと練習試合を組み、結果は「5勝5敗ぐらい。もどかしい試合が続いた」と、森林監督は振り返った。

 やはり、野球は投手がウエートを占める。甲子園決勝で先発した左腕・鈴木佳門(2年)、2番手で胴上げ投手に輝いた右腕・小宅雅己(2年)は、練習試合での登板機会はなかった。

 森林監督は2人に6日間の「オーバーホール」を与えた。新チーム発足時(8月25日)のミーティング後、栃木県出身の投手2人は帰省。「他の部員たちには『特別に帰るよ』と説明しました。甲子園の肉体的、精神的な疲労は想像以上。『あ〜また(練習)か〜』よりは『また、野球がしたい。また、投げたい』という思いになったら、と。お休みをさせたので、体のリカバリーはできている」(森林監督)。県大会2回戦で先発・鈴木は2回無失点、小宅は3番手として、2回1失点。甲子園決勝以来となる実戦マウンドを、無難に抑えた。

「来週は3回戦に勝てば、4回戦(16、17日)と(日程的に)つらいので……。ぶっつけ本番というわけにもいかず、今日の2回戦は二人とも投げさせる予定でした」

 旧チームで四番(右翼手)を務めた加藤右悟(2年)が主将に就任。中学時代に守っていた捕手に戻り、県大会初戦では、初回と2回に2打席連続本塁打を放ち、新たなリーダーとしての姿勢を結果で示した。

 森林監督は主将に抜てきした理由を語る。

「(旧チームの主将)大村(大村昊澄、3年)は任せて安心。大村と同じタイプの人間は、次の代にはいない。まったく違うタイプの加藤が良いか、と。加藤の良さを出して、新しいキャプテン像を築いてほしい。まさしくリニューアル。加藤は能天気で、ヨロヨロしているところがあるが、明るくて、前向き。周りも一緒になって、加藤とスクラムを組む形となればいい」

多く経験を積み、結実するスタイル


 小宅、鈴木、加藤という軸が残ったとはいえ、この日、メンバー入りした残りの22人は甲子園のベンチを経験していない。しかも、1年生12人が背番号を着け、森林監督からすれば「続きではない。スゴロクではないですが、振り出しに戻るのでもう1回、チームづくりをしていかないといけない。僕自身も選手たち、見ているOBにも伝えていく」と、新たな「チャレンジ」を強調した。この試合は18人が出場。秋のメーン会場・保土ヶ谷球場で、公式戦でしか味わえないムードを体感した。どうしても、周囲は全国制覇したチームと比較する。今秋も負ければ終わりのトーナメントだが「所作」の部分で、焦らせるつもりはない。指揮官は何が言いたいのか。

「甲子園を通じて『笑顔』『楽しんでやる』ということが取り上げられましたが、(旧チームは)1年間、積み重ねてきたからこそできることなんです。今の3年生も、最初から笑顔だったわけではありません。試合前も『無理に笑顔を作ったら、気持ち悪いぞ!(苦笑)』なんて話をしました。目の前の一つのこと、チャレンジの気持ちを持ってくれればいい」

「エンジョイ・ベースボール」とは、一筋縄ではいかず、多く経験を積み、結実するスタイルなのである。そこで、森林監督は言った。

「このチームでも『KEIO日本一』を目指す」。慶応高の活動拠点である日吉台球場に掲げてある横断幕をもう一度、確認した。森林監督はあらためて言った「2度目のKEIO日本一」へ、一歩を踏み出した。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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