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『侍ジャパン戦士の青春ストーリー 僕たちの高校野球3』ちょい出し連載

DeNA・牧秀悟(松本第一高)の知られざる高校時代「監督、先輩たちを驚かせたぶっ飛びエピソード」/『侍ジャパン戦士の青春ストーリー 僕たちの高校野球3』ちょい出し連載01

 

天然? 計算? 物怖じしない愛されキャラの1年生スラッガー


『侍ジャパン戦士の青春ストーリー 僕たちの高校野球3』


 現役プロ野球選手たちの高校時代の軌跡を辿る『僕たちの高校野球』。待望のシリーズ第3弾となる『侍ジャパン戦士の青春ストーリー 僕たちの高校野球3』がベースボール・マガジン社から発売になった。ここでは掲載された7選手の秘蔵エピソードの一部を抜粋し、全7回にわたって紹介していく。第1回はDeNA不動の四番であり、侍ジャパンでもムードメーカーとして存在感を放った牧秀悟から。

まさかの「もう1回」


 高校時代から誰に対しても打ち解けるのが早く、1年生の時からいつも輪の中心にいるような選手だったという牧。そんな彼の性格を表した出来事について、当時、松本第一高の監督を務めていた櫻井正孝氏(現・長野俊英高野球部統括責任者)はこんなエピソードを明かしてくれた。

「牧たちの学年が入学して間もないころ、私の自宅で3月と4月生まれの選手たちを招いて誕生日会をやったことがありました。4月(21日)生まれの牧もいたのですが、ひととおり食事が終わって、“じゃあ、みんなでケーキを食べよう”となったら、妻が買ってきていたのがホールケーキではなくて、おそらく好き嫌いもあるだろうからと、一人ひとり選べるようにと思ったんでしょうね、全部違う種類のケーキだったんです。

 それで“どういう順番で選んでいこうか”となりまして、じゃんけんをすることになったのですが、牧は早々と負けてしまった。そしたら一番に勝った先輩が選んだ後に“もう一回、じゃんけんをやり直しましょう!”と(笑)。

 その言い方が全然嫌味がなくて、甘え上手なんですよね。普通1年生が上級生の前で、しかもまだ入学して間もない4月ですよ、とてもそんなこと言えないと思うのですが、牧はさらっと言えるような子でした。

 甘えてきた牧の可愛さに先輩たちも“しょうがいないなぁ”と言って、本当にもう一度じゃんけんすることになったんです。その様子を見ていて、“この選手なら春の大会でいきなり使っても、しっかりと自分の実力を発揮できるだろうな”と思いましたね」

チームの嫌われ役に


松本第一高時代の牧


 また、櫻井氏は3年時に牧に実はチームの中で“嫌われ役”になってもらっていたこともあったという。

「キャプテンがどちらかというと優しいタイプの選手だったんです。それで牧をちょっと呼んで“申し訳ないが、オマエが嫌われ役になって、みんなに檄を飛ばしてくれないか”と。

 そしたら冬のトレーニングでは少しでも手を抜いている選手がいると、同級生にも注意してくれました。特にレギュラーの選手に対しては“そんなことではダメだ。俺らがやらなくてどうする”と泣きながら怒ることもありました。

 そうやって周りに言う分、自分にも厳しかった。牧は短距離は速い方でしたが、長距離は得意な方ではなかったんです。それでも3000メートル走やインターバルでも、絶対に手を抜くようなことはありませんでした。そういう姿をチームみんなが見ていたので、牧の言うことには説得力があり、チームメートも素直に聞いてくれていました」

 高校時代から変わらない周囲を明るく照らすキャラクターと、あくなき野球への情熱とフォア・ザ・チームの心。誰にでも愛される牧秀悟の源流がここにある。

明日は「近藤健介」編です。
週刊ベースボール編集部

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