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【高校野球】桐光学園が夏の甲子園優勝校・慶応を撃破 指揮官が挙げた3つの勝因

 

上回ったチームの成熟度


桐光学園高・法橋は慶応高との神奈川県大会準々決勝で完封した


 桐光学園高は、何事もなかったかのように整列した。目標はここではない。神奈川県大会準々決勝(9月24日)。今夏の甲子園で107年ぶり2度目の全国制覇を遂げた慶応高に、4対0で勝利した。

 3安打完封したエース右腕・法橋瑛良(2年)は試合後、淡々と語った。

「ある程度、実力があって、自信を持てるチーム。自分の野球人生にとっても、財産になる」

 この日、桐光学園高の一番から六番は、敗退した今夏の神奈川大会準々決勝(対東海大相模高)と同じ上位6人だった。残る3人も夏の神奈川大会を経験していた。

 背番号1の法橋、主将・森駿太、俊足好打の矢竹開、捕手・中村優太と、下級生時代から場数を踏んだ最上級生が顔をそろえた。一方、慶応高は主将で捕手・加藤右悟、エース右腕・小宅雅己、左腕・鈴木佳門、遊撃手・足立然以外は、この秋が初の公式戦。慶応高は新チーム結成が最も遅く、公式戦の経験値、チームとしての成熟度において、桐光学園高が上回ったのである。

 野呂雅之監督は、勝因を3つ挙げる。

 まずは、エース・法橋の快投の裏付けだ。

「ウチのグラウンドでやっているアップとキャッチボールを、大会の試合会場でもやる。簡単なようで、実際は難しいことなんです」

 次に、スタンドとの向き合い方である。

「応援の中で野球をやる中で、フィールドにいる選手は、自校の応援はそうですが、仮に(守りの)ピンチでも応援してくれているんだぞ、と」

 慶応高側の一塁スタンドは吹奏楽、チアリーダーを動員。今夏の甲子園で話題となった一体感ある応援で、場内のムードを作り上げていた。

 打線は双方無得点で迎えた7回表に長短4安打を集中して3得点。8回表にも貴重な追加点を挙げ、甲子園優勝の原動力となった小宅と鈴木の両輪を攻略した。3つめのポイントを、野呂監督は言う。

「積極的に打っていこうと言ってきました。追い込まれる前に勝負をつける。凡打、ファウルにしても、ストライクを振っていた。期待している(一番)森、(二番)矢竹は結果的に無安打でしたが、ストライクを振っていったことで、3〜4巡目に目が慣れてきた」

あくまでも目標は甲子園


 桐光学園高は準決勝進出。鎌倉学園高との次戦に勝てば、関東大会への進出が決まる。野呂監督に、慶応高からの勝利に「達成感」があるかを聞くと、真っ向から否定してきた。

「得たものは大きかった。ただ、仮に『達成感』という言葉を私が使ったら、次はありません」

 さらに、言葉は熱くなる。

「ここが、終着点ではない。夏に結果を残した両投手を擁するチームに勝って、高校生ですから、おごるな、勘違いするな、と言っても難しいところはある。そこが、怖いところ。今週までにやってきたことをいつもどおりやること、やり続けることが大切です」

 桐光学園高は松井裕樹(現楽天)が2年生だった2012年夏を最後に、甲子園から遠ざかる。

「あくまでも、目標は甲子園に向けてになるので、この結果をプラスにさせることが、私の仕事です」(野呂監督)

 センバツは春夏を通じて初出場した01年のみ。23年ぶりの春へ、桐光学園高は一つのヤマ場を越えた。

文=岡本朋祐 写真=藤井勝治
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