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今季1勝も…他球団が「間違いなくエース級の素材」と評する中日の右腕は

 

内容の濃いピッチングを披露


8月下旬に一軍復帰し、好投を続ける梅津


 中日に頼もしい右腕が戻ってきた。9月25日の阪神戦(バンテリン)で、先発の梅津晃大が8回5安打1失点の好投で1177日ぶりの白星。東洋大の2学年下で、今季大ブレークした村上頌樹との投手戦を制した。

 久々に上がったお立ち台。中日ファンで埋まったスタンドを見渡して、感謝の言葉を口にした。

「しっかり勝ってこの景色を見たいと思っていたので、すごくうれしいです。時間がかかってしまいましたが、本当に大きい声援をありがとうございました」

 18年ぶりのリーグ優勝を飾った阪神の強力打線を抑え込んだ。2回に佐藤輝明に先制ソロを浴びたが、3回以降は連打を許さない。常時150キロを超える直球に、落差の鋭いフォーク、キレ味鋭いスライダーでアウトを積み重ねる。187センチの長身からショートアームで投げ込む姿は、目標とする大谷翔平(エンゼルス)を彷彿とさせた。

 他球団の首脳陣は、「映像を見て驚いたのはスライダーですね。故障前は直球とフォークのイメージが強かったが、質の高いスライダーをミックスすることで攻略がさらに難しい投手になっている。故障さえなければ2ケタは勝てる投手。素材で言えば間違いなくエース級。対策が必要になってくるでしょうね」と警戒を強める。

ロマンを抱かせる右腕


9月25日の阪神戦で1177日ぶりの勝利を飾って龍空[左]と共にお立ち台に上がった


 新人の2019年に4勝1敗、防御率2.34をマークした右腕はスケールの大きい投球で大きなロマンを抱かせたが、20年以降は右肘の故障に苦しむ。昨年は3月にトミー・ジョン手術を受け、一軍登板なし。リハビリに打ち込んで復活を期した今季はファームでの調整を経て、8月31日のヤクルト戦(バンテリン)で一軍に復帰登板。5回1失点で黒星を喫したが、自己最速を2キロ更新する155キロを計測していた。今月13日のDeNA戦(横浜)でも6回2安打1失点の快投。復帰3試合目も抜群の安定感で今季初白星を飾った。

 潜在能力の高さは誰もが認める。東洋大では上茶谷大河(DeNA)、甲斐野央(ソフトバンク)と共に「東洋大三羽烏」と評されたが、決して順風満帆ではなかった。1年夏にイップスを発症し、3年春までリーグ戦の登板ゼロ。だが、心が折れずに大谷のトレーニングを参考に肉体改造を行ったことで、眠っていた能力が引き出される。3年秋の日大1回戦で二番手としてリーグ戦初登板すると、初球に151キロを計測。その後も故障で戦列を離れた時期があったが、大学最終登板となった4年秋の国学院大3回戦で初勝利をマーク。梅津の努力を見ていたチームメートたちが喜びを露わにしていた姿が印象的だった。

能力の高い先発がそろう中日


 リーグ戦1勝のみにもかかわらず、中日がドラフト2位で指名したことが期待の大きさを物語っている。立浪和義監督も野球評論家だった20年6月に週刊ベースボールのコラムで、「私は、特に梅津選手に注目しています。昨年まではケガが多く、長いイニングを投げていないという不安がありますが、ポテンシャルは非常に高いものがあります」と期待を込めていた。

 下位に低迷する中日だが、先発は能力の高い投手がそろっている。柳裕也小笠原慎之介高橋宏斗の3本柱に加えて、春先に左肘を手術した大野雄大もファームで実戦復帰した。助っ人右腕・メヒア、ベテランの涌井秀章、ゲームメーク能力が高い左腕・松葉貴大、ドラフト1位の仲地礼亜のほか、梅津と同期入団の根尾昂も今季初登板となった9月18日の広島戦(バンテリン)で、7回途中まで自責点ゼロの快投を見せて存在を強烈にアピールした。梅津の好投で先発枠を巡る争いがさらに激化する。

 21年から憧れの松坂大輔が着けていた背番号「18」を身にまとう。首脳陣の期待は高い。来季に向けての戦いはもう始まっている。大輪の花を咲かせられるか。

写真=BBM
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