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【高校野球】ノーシードの快進撃は4強でストップ 全力野球の象徴は“主将、四番、エース”面本和輝

 

身を粉にして働くリーダー


鎌倉学園高の主将・面本は桐光学園高との神奈川大会準決勝で先発して8回途中7失点降板。四番としては、3打数1安打と奮闘した


 関東大会出場を決める神奈川県大会準決勝(9月30日)。鎌倉学園高は桐光学園高に1対7で敗退し、3年ぶりの関東大会出場を逃した。準々決勝進出8チームで、唯一のノーシード校の快進撃は4強で終わった。

 1969年以来となるセンバツ出場は絶望的となったが、今秋の実績が色褪せることはない。鎌倉学園高は全員野球、全力野球が伝統であるが、その象徴が面本和輝(2年)だった。

 主将、四番、エース。すべてを背負ったが、決してワンマンチームではない。自らが先頭に立ち、身を粉にして動くリーダーである。

 今夏は桐蔭学園高との神奈川大会3回戦で敗退(0対4)。2年生で唯一のレギュラーだった面本は5回4失点で敗戦投手となった。後輩にとって、主将で「三番・遊撃」の武井仙太郎が心の支えだったという。

「(ピンチの場面など)いつも声がけをしていただいて……。いつも通りに、戻してくれました。自分も武井さんのような存在になりたいと、キャプテンに立候補しました」

 マウンド上では、気持ちで投げる。常に100パーセントの力だったが、それでは1試合を投げ切るのは難しい。桐光学園高との準決勝は序盤から劣勢の展開だったが、「球威を変えずに、力を抜いて投げるコツを覚えたのは収穫」と振り返った。8回途中7失点で降板した後は、二塁の守備に入った。打撃では、四番にもかかわらず、バットを短く持って打席に立った。

「長く持って詰まるならば、短く持って打とう、と。まずは自分が実践すれば、一人ひとりの意識が変わっていくかな、と」

 0対7で迎えた8回裏。この回の鎌倉学園高の攻撃が無得点ならばコールド負けとなるところだったが、意地の1点を奪っている。

「短く持ったバットから生まれる低い打球で、連打がつながった成功体験は、良かったと思います」

 どんな劣勢でもあきらめない。なぜなら、大応援を背にプレーしていたからである。

「耳どころか、心の奥まで聞こえる感覚でして……。太鼓、吹奏楽、声援が体全体に響きわたり、ものすごく、大きな力になりました。これだけ応援してもらって、自分が下を向いているわけにはいかない。捕手のミットをめがけて投げることに集中できました」

 8回裏の1得点を受けてのスタンドから流れた校歌が、脳裏から離れない。

「(チームメートは)ヒット1本を打つために、素振りを何本振ったか分からない。ヒット1本で入った得点により、たくさんの人が喜んでくださる校歌につながるのが、最大の喜び。自分たちのやりがいの一つでした」

 2時間56分、すべてを出し切ったからこそ、主将・面本は負けても爽やかだった。敗戦から得た学びと、感謝の心。必ず、来夏につながる「1敗」にしてみせる。鎌倉学園高には反省を次に生かす「学習能力」がある。胸を張って、保土ヶ谷球場を後にした。

写真=田中慎一郎
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