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日本ハム・加藤貴之がFAで一番人気?「欲しくない球団がない」と争奪戦必至

 

抜群の制球力を誇る左腕


今季は7勝に終わったが安定感ある投球を見せた加藤


 2年連続最下位に低迷した日本ハム。左腕エース・加藤貴之も悔しい思いが強いのではないだろうか。24試合登板で7勝9敗、防御率2.87。プロ8年目で自身初の2ケタ勝利に届かなかった。

 今年は新球場・エスコンフィールドで、開幕投手に抜擢された。上沢直之伊藤大海を押しのける形で大役を任されたのは新庄剛志監督の信頼の証しだ。昨年は8勝7敗1ホールド、防御率2.01をマーク。抜群の制球力で日本記録を樹立した。規定投球回に到達してシーズン与四球11は、1950年に野口二郎(阪急)が記録した14より少ない。プロ野球最少記録を72年ぶりに更新した。

 今年も精密機械に狂いはない。4月14日の西武戦(エスコンF)で無四球2失点の完投勝利を飾り、今季初勝利をマーク。5月13日のロッテ戦(エスコンF)も無四球で完封勝利を飾った。その後も先発できっちり試合をつくったが、打線の援護に恵まれない登板が目立った。投球内容を見れば、もっと白星を積み重ねても不思議ではない。163回1/3を投げ、3年連続規定投球回をクリア。17四死球は100イニング以上投げた投手の中で、リーグ最少だった。

 制球力だけでなく、スタミナも抜群で1年を通じて安定したパフォーマンスを発揮する。首脳陣にとってこれほど頼もしい投手はいない。4月5日に国内FA権を取得。他球団の編成担当は「今オフのFA市場で一番人気だと思います。欲しくない球団はないでしょう。権利を行使すれば、争奪戦になることは間違いない。左腕の先発は稀少価値がある」と実力を高く評価する。

社会人は内野手として


 加藤は、アマチュア時代にエリート街道を歩んできたわけではない。拓大紅陵高では2年夏に控え投手で千葉県大会準優勝。エースを務めた3年夏も4回戦・習志野高に敗れ、甲子園出場は叶わなかった。驚くことに、社会人野球の新日鐵住金かずさマジックでは打撃センスを買われて内野手として入社している。12年夏に投手に再転向したが、投手としてのブランクが影響したのか左肩を2度痛め、登板機会がなかなかない。

 公式戦デビューは入社3年目の13年5月。チームメートだった岡本健はエースとして活躍し、同年秋のドラフト3位でソフトバンクに入団している。加藤は週刊ベースボールの取材に、「同学年の岡本がプロに行って、かなり刺激になりました。多分、僕が一方的にライバル意識を持っていたと思うんですけど、敗北感もありました」と振り返っている。

スカウト陣の慧眼が的中


 翌14年はドラフト上位候補に挙がったが、夏に左肘を痛めて「まだ会社に貢献していない」という思いが強かったことから残留を決断。入社5年目の15年は本来の状態を取り戻せず、6月の都市対抗予選で本選出場を逃し、加藤も補強選手に選出されなかった。チームに貢献できなかった自責の念は強い。

「(都市対抗は)苦い思い出しか残ってないですね。新日鐵住金かずさマジックの一員として2度出場しましたが、今でも忘れられないのが2014年の大会です。南関東の第1代表として初戦は順調に突破したのですが、2回戦で東京ガスに負けました。その試合は終盤までリードしていて僕は中継ぎで登板しましたが、最後に粘れずサヨナラ負けでチームは敗退しました。そのときに打たれたのは中日の遠藤(遠藤一星)さん。いろいろな方が応援してくれて、球場にも駆けつけてくれていたのに自分がリードを守れなかったのは今でも心に残っています。15年は出場を逃しました。僕はドラフトでプロ行きが決まりましたが、チームメートには申し訳ない気持ちが、ずっとありますね」と語っている。

 評価が分かれたが、日本ハムは即戦力として十分に通用するとしてドラフト2位で指名。スカウト陣の慧眼は的中する。プロ1年目から先発、救援でフル回転して30試合登板で7勝3敗1ホールドとすぐに頭角を現した。

 謙虚な性格で発言も慎重だが、内に秘めた闘志は熱い。プロでステップアップを積み重ね、野球人生の岐路を迎えた今オフ。どのような決断を下すだろうか。

写真=BBM
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