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【大学野球】「追い詰められた中で、4年生がよく打った」と小宮山悟監督も称賛 勝利への「執着心」でV戦線に残った早大

 

狂喜乱舞の控え部員


1点を追う9回裏二死二塁。早大は4年生の代打・篠原[写真]の左越え二塁打で、同点に追いついた。次打者の代打・梅村の中前打で逆転サヨナラ勝ちした[写真=矢野寿明]


[東京六大学リーグ戦]
10月7日(神宮)
早大5x-4立大(早大1勝)

 神宮のネット裏の早大ファンが、歓喜の涙を流していた。一塁側の応援席で声援を送る控え部員も、狂喜乱舞だった。4年間、安部球場で努力していた姿を知っていたからである。

 立大1回戦(10月7日)。早大は3対4で最終回の攻撃を迎えた。9回裏二死二塁の土俵際で代打に告げられたのは、捕手の篠原優(4年・早大学院)。リーグ戦5打席目である。

 早大は捕手3人がベンチ入り。篠原は自らが置かれた立場、を十分に熟知していた。

「印出(太一、3年・中京大中京高)、栗田(勇雅、3年・山梨学院高)と頼もしいキャッチャーがいますので、1本出すのが役割。春は4打席に立たせてもらいましたが、1本も打つことができませんでした。春(4位)が終わってから、秋に優勝するために、この夏、練習を積んできました。その成果を出そうと、自信を持って、打席に立ちました」

 一塁ベンチで指揮した早大・小宮山悟監督はNPB、MLBでプレーし、野球評論家、そして、学生野球における5年の指導キャリアを重ねた上で、一つの予感が働いていた。

「確信めいたものがありました。(2年秋の)新人戦(フレッシュトーナメント)で優勝していましたので。そのイメージが残っている。バタバタしている動きも見られなかった」

リーグ戦初勝利とリーグ戦初安打。二番手で救援した早大の1年生左腕・香西[左]と、同点打の4年生・篠原[右]は記念すべき「1」のポーズを取った[写真=矢野寿明]


 2021年秋のフレッシュトーナメント。篠原は法大との決勝で、2対2の7回裏に勝ち越しタイムリー。五番・捕手で出場したこの試合、2安打2打点とVの原動力となった。リーグ戦デビューは、4年春の遅咲き。自身が言うように、代打4打席で無安打に終わっていた。

「もともと打撃が良い選手。この春は4打席で、良い経験を積んだ」。小宮山監督は、ここ一番の場面で起用することを決めていた。

 立大2回戦の代打は、今秋の初打席だった。2ボール1ストライクからの4球目をたたくと、打球は相手のレフトの頭上を越えた。リーグ戦初安打は、値千金の同点適時二塁打。この一打で一気に早大へとムードが傾き、次打者の代打・梅村大和(3年・早実)の中前適時打で逆転サヨナラ勝ちを収めた。

「初めての取材なんです。球種? 何も覚えていなくて……。無我夢中でした」。篠原は顔をクチャクチャにさせて、喜びを表現した。

 小宮山監督は最上級生を称えた。

「追い詰められた中で、4年生がよく打ったと思います。残り全勝するしか、逆転優勝はない。とにかく『全部勝つ』を合言葉に練習してきました。執着心。見ている人にも伝わったかと思います。重たいゲームを取りましたが、明日のゲーム次第。取ったら本物です」

「秋にかける思いは強い」


 篠原は今秋を最後に、ユニフォームを脱ぐ。大学卒業後は一般企業に就職し、海外におけるマーケティングで活躍する姿を思い描く。

「だからこそ、秋にかける思いは強いです」

 大学野球は4年生の力が、最後の最後の一押しに大きく左右する。先発した加藤孝太郎(4年・下妻一高)は3回表、左腕に打球を受けながらも続投し、7回4失点と粘った。最上級生の熱投を受けて、リーグ戦初勝利を挙げた1年生左腕・香西一希(九州国際大付高)は、8回表から2回無失点でしのぎ、9回裏のサヨナラ劇につなげたのである。

 加藤と篠原の勝利への「執着心」で、早大はV戦線に残った。早大は東大との開幕カードを連勝も、明大戦を1勝2敗で落とした。立大2回戦も、一戦必勝で立ち向かっていく。早稲田大学野球部が最も大切にする言葉である「一球入魂」を、体現していくのみだ。

文=岡本朋祐
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