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首都大学リポート

3年生右腕・阿部克哉が7回を3安打1失点の好投 城西大が桜美林大に勝利し2部優勝校との入れ替え戦を回避【首都大学リポート】

 

2試合連続で好投披露


桜美林大3回戦で好投を見せた城西大・阿部克哉


【10月8日】一部リーグ戦
城西大3-1桜美林大
(2勝1敗)

 秋季首都大学リーグ第6週2日目。今秋、13季ぶりに1部へ復帰した城西大。勝ち点1で迎えた今節は桜美林大との3回戦に臨んだ。

 この試合で、前日に続き先発のマウンドを任されたのが阿部克哉(3年・柳井商工高)だ。「2日連続で先発するのは高校時代も含めて初めて。肩周りや右腕が筋肉痛で少しキツかったのですが、そのなかでどう投げるかを考えていました」。

 意識したのは制球だ。

「前日よりもスピードが出ないことは分かっていたので、高めに浮かないように気を付けました。濱田(濱田友哉)コーチからも『長身(188cm)で低めに投げれば角度が付くのだから、スピードがなくても打たれない』と言われているので、低めへのコントロールを重視して投げました」

 2回表に先制を許したものの、直後に恋田孝一朗(3年・関西高)と中澤拳(4年・西武文理高)の本塁打で逆転すると、以降は快調な投球を披露。3、4、5回は3者凡退に抑えるなど、7回まで投げて3安打1失点の好投。チームも3対1で勝利して、2部優勝校との入れ替え戦を回避。城西大は1部残留を確定させ、「ホッとしました」と笑顔を見せた。

 阿部は山口の柳井商工高の出身。実は「高校を卒業したら一般企業で働こうと思っていました」と野球を続けるつもりも、進学するつもりもなく、就職に備えていたという。

 運命が変わったのは高校3年になる直前の2月。きっかけは城西大が愛媛県の今治市で行っていたキャンプに練習参加したことだ。「当時の高校の監督から『上の世界を見に行こう』と誘われて、ブルペンでピッチングを披露したんですが、そこでストレートを評価してもらえたのだと思います」。

 一方、城西大の村上文敏監督は「面白いピッチャーがいると連れてこられたのが阿部でした。当時は粗削りでしたが『体が大きいわりにはピッチングをまとめてくるな』という印象でした」と振り返る。

 そのキャンプにはNPBのスカウトも来ており、その後は阿部を視察するために高校のグラウンドまで何度も足を運んでいたという。周囲からの好評価を受けて「野球を続けることに気持ちが傾いていった」と、秋にはプロ志望届も提出した。

 しかし、「夏の大会も全然ダメだったので『難しいだろうな』と思っていました」とドラフト会議では指名されることなく、城西大に入学することとなった。

デビュー戦は今春


 部員20名だった高校から100名を超える城西大へ。環境が変わり「入った当時は大学のレベルの高さを感じていたので、試合には出られそうにないなと思っていました」という。

 加えて、2年生までは度重なるケガに悩まされた。そこでトレーニングの後にしっかりと柔軟運動を取り入れるとケガが減り、ようやく本領を発揮。ウエートトレーニングによって体重は高校時代の85kgから93kgに増え、最速も144キロから4キロアップした。

 変化球についても「これまではストライクが入らなかったのですが、チェンジアップで空振りが取れるようになりましたし、スライダーも投げる時に狙う場所を変えたことで精度が上がりました」と話す。

 現在の球種は他にカーブ、カットボール、ツーシーム、フォーク。特に大学で覚えたというツーシームは「左打者を打ち取るのが楽になりました」と投球の幅も広がった。

 今春にリーグ戦デビューを果たすと、2勝。さらに、武蔵大との入れ替え戦では先勝されて土壇場に追い込まれた2回戦に先発し、5回途中まで無失点。チームを勝利へ導き、1部昇格への道筋をつけた。この好投に村上監督も「こういう大事な試合で良い仕事をしてくれる。持っている選手なのかもしれません」と期待をかけている。

 この秋は第5週を終えた時点でリーグ1位の防御率0.54。第4週の筑波大2回戦では7回3分の1を投げて3安打無失点に抑え「自信が付いた」という。

 1部の打者と対峙するのは今季が初めてだが「バッターの顔色や仕草を注意して見るようにしていて、見逃し方やスイングの軌道からどんな球種を待っているのか判断しています」とマウンドで打者を観察する余裕も出てきたことで、さらなる好投につながっている。

 そして、桜美林大2回戦では自己最速の148キロをマーク。連投となった桜美林大との3回戦では1部リーグでの初白星を飾り「さらに自信が付きました」と阿部。

 来季はエースとしてチームを引っ張る立場となるが「4年生が抜けたから弱くなったとは言われたくない。来年は全国大会に出場したいです」と話し、個人としては「ストレートを150kキロの大台に乗せ、投手としての完成度も上げ、プロを目指したい」と目標を掲げた。

 今年、急成長を遂げたばかりだが、大願を成就させるためにも、より一層の進化を目指す。

文&写真=大平明
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