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【大学野球】地道に努力を重ねて…自らの手で主戦投手の座を手にした法大・吉鶴翔瑛 

 

3年秋にして初めてカード頭で先発


法大・吉鶴は早大1回戦で先発。6回まで無失点も7回裏に今季初失点を喫し、敗戦投手となった[写真=矢野寿明]


[東京六大学秋季リーグ戦]
10月14日(神宮)
早大4-2法大(早大1勝)

 法大・吉鶴翔瑛(3年・木更津総合高)が早大1回戦で先発。3年秋にして初めて、カード頭を任された。開幕3カードを終え、9試合中6試合に登板。先発、救援にフル回転してチーム最多3勝を挙げ、18回1/3で防御率0.00と抜群の安定感を誇っていた。加藤重雄監督は「失点ゼロ。調子も良く、実力を含め、ベンチから安心して見ていられる」と、調子の良い選手を起用するのも当然の流れだった。

 今春4勝を挙げたプロ注目左腕・尾崎完太(4年・滋賀学園高)が本来の調子ではなく、157キロ右腕・篠木健太郎(3年・木更津総合高)は3カードで1回戦の先発を務めてきたが、東大1回戦をアクシデントにより1回降板。同2、3回戦はベンチを外れ、早大1回戦も登録外だった。加藤監督は「(篠木)本人と話した中では、痛めているわけではない、と。キャッチボールもしている。(右腕の)張りが強いとのことで、抑えがきかない、と。本人は『頑張ります』と言うんですが、将来もある。ほかで頑張れる投手力もあるので『無理をするな』という形になりました」と明かした。

 吉鶴と篠木は高校時代からのチームメートである。篠木は木更津総合高で主将を務め、最速150キロ右腕は「関東No.1」と言われていた。吉鶴とは2本柱を形成したが、脚光を浴びる機会は篠木のほうが多かった。

 2人は法大へ進学。吉鶴は1年時、篠木について、こう語ったことがある。

「高校では篠木がエースで、自分は二番手。『二番手』と言われるのが嫌というか……。大学では『左右のエース』として頑張っていきたい思いが強いです」

 篠木は1年秋にリーグ戦デビューし、2年時には大学日本代表でプレーし、3年春には最優秀防御率のタイトルを初受賞。大学でも実績において、先を越されたが、吉鶴は周囲に惑わされることなく、地道に努力を重ねた。

 2年春から登板機会を重ね、主に救援で、加藤監督、チームの信頼を得ていった。高校を通じて3学年上の先輩であり、尊敬する左腕・山下輝(現ヤクルト)が背負った背番号「21」。投手陣の台所事情が厳しくなる中、自らの手で、主戦投手の座を手にしたのだった。

来秋のドラフトを目指して


 早大1回戦は6回まで1安打無失点に封じていたが、2点リードした7回裏途中で降板し、4失点で敗戦投手となった。これまでの最長イニングは東大3回戦での6回(無失点)と、未知の領域で攻略されたが、これも、神宮でしか味わえない一つの貴重な経験である。

 最速151キロ。対左打者への内角を厳しく突くストレートが持ち味で、対右打者の外角へもキレのあるボールを投じる。変化球も自信のあるスライダーを軸にカーブ、チェンジアップ、ツーシーム、カットボールと精度が高い。ソフトバンクの三軍バッテリーコーチ・吉鶴憲治氏(元中日ロッテ捕手)を父に持ち、吉鶴も来年の2024年ドラフトにおける「プロ志望」を口にする。

 篠木が不在のいま、吉鶴にかかる負担は大きくなる。マウンドに上がれない仲間の無念を背負い、一球一球に気持ちを込めていく。

文=岡本朋祐
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