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【大学野球】堀井哲也監督の信頼は揺るがない ピンチを抑え切り男の意地を見せた慶大右腕・谷村然

 

悪夢のサヨナラ負けから


慶大・谷村は8回表のピンチを抑えると、ガッツポーズを見せた[写真=矢野寿明]


[東京六大学秋季リーグ戦第8週]
10月29日(神宮)
慶大4-0早大(1勝1敗)

 まるで、鬼の形相だった。

 慶大が4対0とリードした8回表二死二、三塁。早大の代打・岡西佑弥(1年・智弁和歌山高)を空振り三振に仕留めると、7回表から救援した二番手・谷村然(4年・桐光学園高)は渾身のガッツポーズ。何度もマウンド付近で跳び跳ねて、喜びを表現した。

 男の意地だった。

 前日の1回戦。慶大は0対1の9回表に逆転し、9回裏は谷村がリリーフも、一死も奪えず、1四球を挟んで4連打で悪夢のサヨナラ負けを喫した。常に淡々としている谷村は、この日も悔しさを押し殺し、試合後の整列に向かった。早大がリーグ戦優勝へ王手とした。

 あとがない2回戦。慶大の先発・竹内丈(1年・桐蔭学園高)は6回3安打無失点。打線は1回裏、四番・栗林泰三(4年・桐蔭学園高)の先制適時打、五番・宮崎恭輔(4年・国学院久我山高)のタイムリーで2点目を挙げ、試合の主導権を握った。竹内は最速145キロ。ボールを丁寧に低めに集め、時には、クイック投法を駆使し、クレバーなスタイルで一つひとつ、アウトを積み重ねる。この投球術は「谷村さんから教わりました」と、竹内は明かした。

 今秋は2年生右腕エース・外丸東眞(前橋育英高)がリーグ最多5勝を挙げているが、球速は封印し「打者を打ち取る投球」に徹する。投手指導を任されている中根慎一郎助監督の方針により、打者を見た投球、コントロール重視のスタイルが投手陣全体に共有されている。

早大2回戦で先制打を放った4年生・栗林[左]と勝利投手となった1年生・竹内[右]。1勝1敗のタイでリーグ優勝へ逆王手とした[写真=矢野寿明]


 4年生・谷村がそのお手本。3年秋までは、リーグ戦登板なし。自らの生きる道を信じ、努力を重ね、4年春から大事な場面を任されている。

 早大1回戦では、信じがたい光景が広かったが、堀井哲也監督の信頼は揺るがなかった。

「ここまで谷村で何試合も勝ってきた。(先日は9回裏に)1点を守り切るのは酷だった。本来の姿は、こんなものではない」

 谷村は指揮官の期待に応えた。8回表の正念場を乗り越えると、9回表は冷静に早大打線との対戦に集中し、3イニング無失点で、試合を締めた。竹内は「負けたら終わりよりも、1日でも長く4年生と野球がやりたかった」と、2回戦の好投を振り返った。栗林は「4年生の意地は谷村だけではなく、4年生の力が出ている。明日(3回戦)は勝ちます」と語った。慶大は逆王手。

 堀井監督は「結果は勝ち負けしかない。それより、自分たちの力を出し切ってほしい」と重圧をかけない。この日の試合前練習も終始、リラックスムードで追い詰められた様子はまったく見られなかった。結果は苦しみ抜いた、日々の練習で出ている。自らで考え、取り組んできたことを神宮で発揮する「エンジョイ・ベースボール」を貫くだけである。

文=岡本朋祐
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