週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

巨人・西舘勇陽は新人王の最有力候補 チーム事情で「守護神に抜擢」可能性も

 

クイック投法で投げ込む剛球


今秋のドラフトで巨人から1位指名された西舘


 新人の活躍はチーム力を大きく左右する。今季シーズン終盤に外野のスタメンに定着した阪神森下翔太は勝負強い打撃で38年ぶりの日本一に貢献した。一方で2年連続Bクラスに低迷した巨人。来季のV奪回のキーマンとなる新人が、ドラフト1位で入団した西舘勇陽(中大)だ。

 日本ハムと抽選で競合し、中大の先輩でもある阿部慎之助監督が当たりクジを引き当てた。大学生投手が豊作のドラフトだったが、「西舘は力が抜きん出ている」と評する声が多い。

「走者がいなくてもクイックで投げるのですが、直球は常時150キロを超えてカットボール、フォークを決め球に三振奪取能力が高い。制球で乱れる心配もありません。先発、救援どちらでも適性がある投手ですが、巨人のウィークポイントを考えると後ろに回るかもしれません。大勢の状態が上がらない場合は守護神に抜擢される可能性も考えられる。来季は間違いなく新人王の有力候補になるでしょう」(アマチュア野球を取材するスポーツ紙記者)

高校時代は3度、甲子園へ


 花巻東高で甲子園に3度出場。県内の同学年には大船渡の佐々木朗希(現ロッテ)という日米のスカウトが熱視線を送る怪物がいた。3年夏の岩手大会決勝で、佐々木が先発を回避した試合は社会問題として取り上げられるほど大きな反響を呼んだ。この試合に西舘は6回から救援でマウンドに上がった。「投げてくる想定で、研究を重ねていました。動揺? なかったです。先制点を奪って、主導権を握ることしか考えていませんでした(花巻東高が12対2で勝利)。自分たちは普通でしたが、大船渡さんはやりづらかったかもしれません」と振り返り、「自分には、ライバルはいないんです。人のことを気にするよりも、自分のピッチングをすることのほうが大事ですので……。佐々木朗希は中学3年のときにKボールで140キロを計測したという記事を見て、その段階で自分とは次元が違う、と。大船渡高でも『プロの人が高校野球で投げている』という感覚でした」と週刊ベースボールの取材に語っている。

 中大に進学後は1年秋に公式戦デビュー。転機となったのは2年の冬だ。左足を上げていた投球フォームをクイック投法に変更したところ、球速が最速155キロに上がり変化球の精度も上がった。3年秋は9試合に先発して4勝をマーク。4年春は痛打を浴びる場面が目立ったが、秋は亜大戦で1安打13奪三振完封を飾るなど、8試合登板で防御率1.11と安定感を取り戻した。

救援陣が不安だった巨人


 巨人の投手陣を見ると、先発は戸郷翔征山崎伊織、来日2年目のフォスター・グリフィンヨアンデル・メンデス赤星優志菅野智之横川凱松井颯と頭数はそろっている。不安要素が大きいのが救援陣だ。昨季の救援防御率3.81はリーグワースト。今オフは長距離砲のアダム・ウォーカーを放出し、ソフトバンクから高橋礼泉圭輔をトレードで獲得。オリックスの快速球右腕・近藤大亮も金銭トレードで獲得し、現役ドラフトで阪神から馬場皐輔が加入した。救援陣の層が厚くなったが、まだまだ盤石と言えない。西舘がセットアッパーに抜擢される可能性が十分にある。

 抑えの最有力候補は大勢だが、昨季に故障で夏場に2カ月間離脱するなど27試合登板で3勝14セーブ1ホールド、防御率4.50と安定感を欠いた。シーズン終盤は打ち込まれる試合が続いたが、来年2月の春季キャンプ以降で修正できているか。大勢が本来の力を発揮できない状況なら、西舘が新守護神という選択肢が生まれる。11月下旬に開催された「ジャイアンツファンフェスタ2023」で背番号「17」を初披露した際は、「1年間一軍に帯同することを目標に少しでもチームに貢献できるように頑張ります」と力強く宣言した。先発か、救援か――。ドラ1右腕の起用法が注目される。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング