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若鷹ウインターリーグ奮戦記

世代最速の剛腕・風間球打、台湾でつかんだ「覚醒」のヒント【若鷹ウインターリーグ奮戦記VOL.4】

 

最速157キロを引っ提げてドラフト1位でプロ入りした風間球打だったが、この2年間の多くはケガに苦しめられ本来の姿をマウンドで発揮できていない。必要なのはキッカケ。それをつかむのはやはり実戦のマウンドしかない。台湾で行われたアジアウインターベースボールリーグを経て、風間の言葉に力が宿っているように感じられた。どんな収穫を得たのか、その中身を語ってくれた。

2年連続で海外ウインターリーグに派遣


台湾に派遣された投手陣。[右から]風間球打投手、佐藤宏樹投手、井崎燦志郎投手、大竹風雅投手


 高校生で157キロをマーク。「世代最速の剛腕」の称号を引っ提げドラフト1位でソフトバンクに入団した風間球打は、2年連続でシーズンオフは海外ウインターリーグに派遣された。昨年はオーストラリアで腕を磨いた。今年の舞台は台湾だった。「それぞれタイプが違うので一概には言えないのかもしれませんが、僕の実感では台湾で対戦したバッターの方が、レベルが高かったように感じました」。

 台湾で行われた「アジアウインターベースボールリーグ」は現地プロ球団の台鋼ホークス、U-23台湾選抜、台湾プロ野球選抜に加えて、日本から参戦する社会人(JABA)選抜、NPBレッド(ソフトバンク、オリックス阪神ロッテヤクルトの混成チーム)、NPBホワイト(巨人DeNA楽天西武中日の混成チーム)の6チームでしのぎを削り合う。

 風間はプロ入りから2年間、一軍はもとより二軍のマウンドにすら立てていない。公式戦実績はゼロ。みやざきフェニックス・リーグでの登板はあるが、シーズン中は三軍ないしは四軍で投げただけだった。そもそもマウンドで戦った機会自体が決して多くなかった。2年間とも大半はリハビリに時間を費やした。1年目は右肘の張りや右膝の違和感を発症。2年目は春先に腰椎分離症と診断された。その影響はキャンプ中からあったようで、3月1日の宮崎・生目第二球場での練習試合・オリックス戦では先発する初回一死しか取れずに3安打5四球8失点という信じられない大乱調で降板していた。「自分の感覚的には行けると思って登板したんですけど、腰が限界でした。それで(球が)抜けたりしてどうにもならなかった。キャッチボールもダメでした」とのちに振り返った。

 今年、実戦復帰できたのは10月になってから。社会人相手に登板し、その後は三軍の一員として韓国遠征して現地プロ球団のファームとも戦った。「試合から離れた期間はすごく長く感じましたけど、感覚がよくなりました。去年もケガからの復帰を経験しましたが、そのときはあまり球威がなかった。球速的には出てたけど、自分の持ち味の勢いがあまりなかったんです。あまり自信があるボールじゃなかった。なんかモヤモヤしながらやっていました。今年は、言ってみれば高校のときの勢いを思い出した感じです。スライダーも腕が振れる。悪いときは置きに行くから横に曲がるんですけど、縦に曲がっていた。腕が振れている証拠なんです」。

開幕戦で2回1四球無失点


[左から]開幕戦のCTBA選抜[台湾アマ選抜]戦に出場した風間球打投手、藤野恵音選手、井崎燦志郎投手。8対1で初戦勝利を収めた


 持ち味は躍動感のある投球フォームから繰り出される剛速球だ。韓国遠征時には153キロをマークしたという。まずはその長所を存分に引き出し、また体に沁み込ませる狙いもあって短いイニングを任された。台湾でのウインターリーグでも役割は主に中継ぎだった。結果的に5試合に登板、1勝1敗で防御率2.45とトータルで見ればまずまずの成績を残した。ただ、試合を振り返ると風間の表情が曇った。「状態は悪くなかったけど、自分で崩れて失点してしまった試合が1度あったんです。それが悔しくて」。現地で2度目の登板となった11月28日の台鋼ホークス戦。制球が乱れてしまい1回2安打3四球で2失点を喫した。

 コントロール難は春先に地獄を味わっている。それが“悪癖”となれば致命的なことだ。ただ、風間は次戦以降にきっちり修正してみせた。その後の3度の登板では計8イニングを投げて1失点のみで、三振も10個を奪った。「台湾に行く前の秋季キャンプで無走者想定でもセットポジションから投げる練習をしたら手応えがあったんです。だけど、練習のブルペンと試合は違った……。力みや緊張感から体が突っ込んでしまい、直球がショートバウンドしたり逆に高めに抜けてしまったりバラバラだった。そこで以前のノーワインドアップに戻したんです。するとすごくいい感じで投げられました。悔しい経験でしたけど、試合で投げたから気づけたことでもある。オフの間に知ることが出来たのは来季につながる意味でも大きかったと思います」。

 また、風間といえば剛速球に焦点を当ててしまいがちだが、その自己満足からの脱却にも気づいた。「高校生のころだってストレートばかりだと当てられてファウルになっていました。それがプロレベルだとはじき返されます。カーブやスライダーをしっかり投げきったとき、相手が嫌がる反応をするのが分かるんです。その中でストレートを投げる。すると変化球もストレートもどちらも有効になる。変化球を操れることでピッチングがすごく楽になるというのも実感したウインターリーグでした」。

 ところでウインターリーグでの5試合登板中、1試合は先発のマウンドに上がった。その日の投球内容は4回4安打5三振2四球で1失点。しっかりゲームを作った。「先発投手がいなくて、リリーフ勢から誰かが行くことになっていたんです。登板間隔がやや空いていた僕が指名されました。2回か3回だよと言われましたが、状態もよくて。行けるところまで頑張れということで4イニングを投げました。久しぶりです。去年のオーストラリアで5回投げましたけど、プロに入ってそれだけのイニングを投げたのはこれが2度目でした」。

 久しぶりの感覚。やってみて感じたのは「長いイニングを投げても出力が落ちる感じはなかった」という自信だった。「来年はまずケガをしないこと。自分の体としっかり向き合って予防にもさらに努めたいです。そしてどんな起用になるのか分かりませんが、先発をしたい気持ちはあります。でも中継ぎならば、そこで期待に応えられる結果を残して、まずは二軍でしっかり結果を残して一軍に呼ばれるシーズンにしたいです」。

 風間という男は元来、根っからの明るいキャラと満点の度胸が最大の長所だ。NPBレッドチームでもイジられキャラにもなって他球団の選手たちとの交流を深めたという。こういうタイプは一度自信をつけると驚がくのスピードで成長を遂げていくケースが多い。背番号1をつける右腕は勝負の3年目にどんな真価を発揮するのだろうか。準備段階となる1月はチームの先輩である武田翔太と一緒に自主トレをして始動する予定だという。

文=田尻耕太郎 写真=福岡ソフトバンクホークス
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