充実した投手陣を誇る西武
西武から今オフにFA移籍した
山川穂高。本塁打王を3度、打点王を1度獲得した実績を持つ長距離砲の対戦が注目されるのは古巣・西武戦だ。
互いに手の内を知り尽くしているだけに、どちらが有利とは言えないだろう。ただ西武の投手陣を打ち崩すのは難易度が高い。昨年のチーム防御率2.93はリーグ2位。先発陣は昨季2ケタ勝利をマークした
高橋光成、
平良海馬、
今井達也、プロ2年目で自己最多の9勝と飛躍した
隅田知一郎、過去に2ケタ勝を挙げた実績を持つ
松本航、
與座海人と実力派投手がズラリ。ドラフト1位の大学No.1左腕・
武内夏暉(国学院大)も即戦力の呼び声が高く、先発ローテーションに割って入る可能性が十分にある。
リリーバーも能力の高い投手がそろっている。昨季の救援陣防御率2.79はリーグ2位。
佐藤隼輔、
田村伊知郎、
豆田泰志、
本田圭佑、
水上由伸、
青山美夏人と投げっぷりの良い投手がそろい、FAで去就が注目された鉄腕・
平井克典も残留を決めた。昨季は防御率5.45と不安定だった通算194セーブ右腕・
増田達至は期する思いが強いだろう。
10年間在籍していた西武に対し、山川は特別な感情を持っている。昨季は自身の不祥事で17試合出場にとどまった。ソフトバンクの入団会見では「一連の私の不祥事によって、ライオンズファン、ライオンズ球団、プロ野球ファン、全ての関係者の方に多大なるご迷惑をおかけしたことを重ねてお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。西武ライオンズさんには入団から10年間、本当に楽しいときも、苦しいときも支えてくれましたし、応援してくれました。本当に感謝しております」と冒頭に語っていた。
序盤での対戦が重要に
西武ファンの間でさまざまな思いがある。スポーツ紙記者は「FAは選手の権利なので行使した決断は尊重されるべきですが、西武戦はブーイングの嵐になる可能性がある。球場が独特の雰囲気に包まれる中で、流れを変えるためには結果を出すしかない。西武側も山川を調子に乗らせたくないので、序盤の対戦が重要になると思います。抑えられれば自信につながるし、山川が打てば今後の対戦で精神的に優位に立てる」と指摘する。
西武が黄金時代を築いた80年〜90年代に19年間コーチを務めた野球評論家の
伊原春樹氏は週刊ベールボールのコラムで、山川について以下のように語っている。
「バッシングを承知の上で移籍を決断した山川。『野球で結果を出して許してほしいとは思っていない』とも語ったが、成績不振に終わればさらに冷たい視線にさらされてしまう。もともと野球に対しては真摯(しんし)な強打者だ。その覚悟は相当なものだろう。私は24年、山川がソフトバンクのV奪回へ爆発的なバッティングを見せてくれると思う」
森友哉は西武戦で好成績
昨季、古巣・西武の投手陣を打ち込んだオリックス・森
昨オフに西武からオリックスにFA移籍し、リーグ3連覇に大きく貢献した
森友哉の活躍は良きお手本になる。2度の故障で戦線離脱したため110試合出場にとどまったが、打率.294、18本塁打、64打点をマーク。四番を務めることが多く、得点圏打率.363と勝負強さを発揮した。古巣・西武戦は打率.319、4本塁打、12打点の好成績をマーク。チームも17勝8敗と大きく勝ち越した。
昨季3位に終わったソフトバンクは西武戦で13勝12敗とほぼ互角。データを見ると主力打者たちが抑え込まれている。
日本ハムからFA移籍1年目で自身初の本塁打王、打点王を獲得した
近藤健介だが、西武戦は打率.236、3本塁打、12打点と対戦した球団別で最も成績が悪い。自身2度目の最多安打に輝いた
柳田悠岐も打率.241、2本塁打、7打点とパ・リーグで対戦した球団の中で唯一打率3割を切った。
好投手がそろう西武を打ち崩せるか。ポイントゲッターとして期待される山川の活躍がカギを握ることは間違いない。
写真=BBM