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可能性が広がるジャパンウィンターリーグ 契約選手へ至ったのは19人と第1回からほぼ倍増

 

2つのリーグに分けて開催


沖縄で開催されたジャパンウィンターリーグ2023は、第1回の22年以上の成果を収めた[写真提供=JWL]


 ジャパンウィンターリーグ2023(JWL)が昨年11月23日から12月24日まで、沖縄県内の3球場で行われた。同リーグの基本コンセプトは「沖縄から世界へ」そして、目的は「陽の目を浴びていない場所に光を」である。

 従来の「トライアウト」とは、1日開催がほとんどだが、同リーグは約1カ月、実戦の場を設ける。試合では測定における全選手の評価をトラッキングシステム(ラプソード)により数値化され、リモートスカウティングも可能となっている。第1回の2022年は一つのリーグ(海外選手3カ国から7人を含む参加66人のうち、社会人野球5チームから派遣された20人は実戦目的で参加)で対戦したが、第2回はプロになるための「トライアウト・リーグ」(前・後期)と、実戦目的の「アドバンス・リーグ」に分けて開催された。

 参加者は101人(トライアウト51人、アドバンス50人のうち社会人5チーム、独立チーム8チーム)。海外からは10カ国30人が参加した。スカウト視察は第1回が31チーム(MLB、NPB、独立リーグ、社会人野球)だったのに対して、第2回は33チーム(MLB2球団、NPB2球団、CPBL1球団、ABL1球団、社会人7チーム、国内外の独立リーグ20球団)が視察した(リアル視察29チーム、リモート視察4チーム)。

 契約選手へ至ったのは第1回の10人(独立リーグなど)から、19人(うち海外選手は6人、すべて独立リーグ)とほぼ倍増。1月5日現在で、交渉中の選手は17人と成果を残した。契約が締結した独立リーグは、22年は北海道フロンティアリーグ、関西独立リーグだったが、23年は両リーグに加えて、四国アイランドリーグ1人、BCリーグ1人からも契約選手が誕生し、その可能性は広がっている。

アドバンス・リーグでMVPを受賞したのは右腕のイーサン・スクイージャ。156キロを計測して、NPB関係者も目を細めた[写真提供=JWL]


 アドバンス・リーグでMVPを受賞したのは右腕のイーサン・スクイージャ(サバンナ・バナナズに在籍)だ。海外選手と社会人選手によるエキシビションマッチでは最終回まで完全試合ペース。7回に四球を与え、日本人MVPを受賞したHonda・野尻幸輝が右前打を放ち、ノーヒットノーランを阻止するのがやっと。最速156キロを計測し、シャットアウト勝利で締めた。NPB2球団の関係者が視察。社会人チームがオファーを出したが、条件面で折り合いがつかず、契約には至らなかった。ただ、こうした動きがあっただけでも前進なのである。

 自チームでは出場機会の少ない社会人選手にとっては、オフシーズンも実戦経験を積む貴重な機会だ。22年の第1回で活躍したHonda・三浦良裕は、23年に自チームでレギュラーを獲得。沖縄での武者修行を経てブレークの道筋をつけ、今回参加したメンバーには24年のNPBドラフトでの指名を目指す選手もおり、飛躍が期待される。

正念場の3年目へ


「トライアウト・リーグ」では高校中退後、クラブチームでプレーする選手、大学の野球部を退部して、クラブチームでプレーする選手などが、新たな環境でのプレー続行を目指すため、白球を追った。「セーフティーネットの場所になってくれている」(鷲崎一誠代表)。一方で、学生野球の参加者はなかった。

「大学野球を終え、就職するのか。それとも、野球を続けるのか。その選択肢として使っていただきたいですが、JWLが学生に浸透するのはもう少し、時間が必要かもしれません。ただ、今回、海外選手の市場を見つけることができたのは大きな収穫です。アドバンス・リーグは海外選手が引っ張る構図。昨年は社会人選手が目立っていた中で、リーグ自体のレベルアップにつながったと見ています」

 主役は選手だけではない。トレーナー、専門学校のアナリスト、アナウンスアカデミー受講生も、リーグ運営に携わった。コーディネーターとして参加していた米国人コーチは、中信兄弟(CPBL)のコーチ契約をつかんだ。また、社会人野球・パナソニックからも井上貴晴コーチがコーディネーターとして参加。各種データを用いたリーグ運営における知識を吸収し、自チームへと持ち帰った。

 データ使用においては、打撃を数値化できる「BLAST」が有効活用された。打撃練習中に使うケースが多いが、同リーグでは試合で稼働。即時、選手にフィードバックされるシステムが構築された。ある選手が左飛だった結果を踏まえ、バットの角度、スイングスピードを修正すると、次打席で本塁打。視察したNPB関係者からも高い評価を受けた。

JICA[独立行政法人国際協力機構]とJWLが協力した「開発途上国若手野球選手 発掘プロジェクト」を実施した[写真提供=JWL]


 新たな取り組みとしては、JICA(独立行政法人国際協力機構)とJWLが協力しての「開発途上国若手野球選手 発掘プロジェクト」を実施。JICA海外協力隊員が指導している選手の中から審査し、日系アルゼンチン人のペドロ・アンマ選手を招待した。参加費用、渡航費は、沖縄県内の企業がサポート。同リーグの「陽の目を浴びていない場所に光を」のコンセプトに合致する有意義な事業であり、第3回以降も継続していくという。

 鷲崎代表は総括と、2024年(第3回)への展望を語る。

「勝負の2年目と位置付けていた中で、契約選手、参加選手の数字で大きな実績を上げることができました。1年目からのステップアップとしては、大成功です。3年目はリーグとしていよいよ正念場。文化として根づくための3年目。体制を整えて、成長曲線を変えずにやっていく。リーグとして野球界に根づくための3年目。来年も2リーグ開催で、口コミなどで、海外選手の参加が増えることが予想されます。この2年で末来への準備が整備されたと自負しておりますのでNPB、CPBLの選手参加も期待したいと思います。多くの選手を受け入れて、多くの選手が羽ばたいていくリーグに成長させていきたいです」

「夢をつくる場所」を提供するため、22年に(株)ジャパンリーグを創業した鷲崎代表。「ゼロから1」を生み出すのは、大変な労力である。JWLは、一つひとつ階段を上がっている。
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