週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

【大学野球】自覚がみなぎる早大第114代主将 印出太一は今年の目標を「答えないようにしています」

 

早大元コーチ宅を訪問


早大の主将・印出は歴史と伝統を背負って戦う[写真=BBM]


 第114代主将は、自覚がみなぎっている。

 早大は主将の左腕・早川隆久(楽天)を擁した2020年秋を最後に、リーグ優勝から遠ざかる。21年秋、22年秋、23年秋は「あと1勝」で天皇杯奪還を逃している。

 今春からキャプテンナンバー「10」を背負う不動の正捕手・印出太一(新4年・中京大中京高)は新チーム結成から数週間後、早大元コーチ宅を訪問した。

「主務、新人監督の3人で徳武定祐さん(元国鉄ほか)の下へ足を運ぶと『秋のリーグ戦は何だ!!』と、愛のあるお叱りを受けました。『すみません……』と。そう言われることは、覚悟していました。徳武さんは主将として、1960年秋の早慶戦6連戦で四番・サード。『早稲田の主将とはこうだ!! 歯を食いしばって頑張れ』と言われました。『圧倒的な結果を残すしかない。黙って、選手を導いていけ』と。勉強をさせていただきました」

 印出は覚悟を決めた。1月5日。練習始動日の取材対応で目標を問われると、こう言った。

「答えないようにしています。リーグ優勝、日本一。口にするのは簡単です。自分が在学してからは優勝経験がない。稲門会、早稲田ファンの信頼を失っている。軽々しく言っても、響かない。姿と結果で示すしかない。黙って、安部球場で練習を積んで、結果を出して、信頼を取り戻すことが大事です」

 印出には名門校を再建した「経験値」がある。中京大中京高で主将となった2019年、2年秋の県大会、東海大会を制すと、明治神宮大会では初優勝を遂げた。1年秋は東海大会準決勝で敗退し、2年夏は愛知大会準決勝敗退。「あと、一歩で甲子園を逃してきた。勝ち切るためには、何が必要かを詰めてきました。早稲田でも、あと1勝でリーグ優勝を逃している。高校、大学で状況は違いますが、通ずる部分がある」。早大では2年春からマスクをかぶり、同秋にはベストナインを初受賞した。3年春から四番・捕手としてけん引。勝負の学生ラストシーズンに立て直しを図る。

大事なのは2連勝で勝ち切ること


 チームとしての課題は明確である。昨秋は勝ち点(2勝先勝)を取ったほうがリーグ優勝の早慶戦で、早大は1回戦を先勝。優勝に王手をかけてから、屈辱の連敗を喫した。

「勝ち点を落としたカードでは、2回戦が取れていない。2連勝で勝ち切ることが大事。打線は先制点を奪って主導権を握る。捕手としては2回戦の先発投手を粘らせる。もっと頭を使ってリードしていかないといけない」

 ディフェンスの要としてチームをけん引した上で、打率4割、5本塁打、15打点で三冠王を奪取するのが目標だ。副将・吉納も三冠王を照準としており、チーム内競争の充実が、全体の活性化につながる。天皇杯奪還へ貢献できれば、大学卒業後の進路も拓けてくる。

「高校の同級生2人がプロ入り(中日高橋宏斗巨人中山礼都)して、おめでとうの一方で、負けたくない、追いつきたい思いが芽生えました。自分はだいぶ前から大学進学で決めていて、この4年間をやり切ってプロへ行くんだ、と早稲田の門をたたきました。その思いは変わっていません」

 印出には、周囲を冷静に見渡す広い視野がある。1月1日、能登半島地震による甚大な被害を受けて、5日の取材冒頭、主将は言った。

「被災された方々がつらい思い、苦しい思いをされている中で、自分たちはこうして、全員がそろった中で野球ができること、当たり前の状況に感謝したい。被災していない自分たちができるのは募金、スポーツを通して勇気を届ける。自分たちのできること、日本人としてやれることを考えていきたい」

 早大入学から3年。練習始動日で見せた引き締まった表情は、昨秋までとは別人だった。第114代主将。1901年創部の伝統校を束ねるチームリーダーは文字どおり、精神的支柱だ。

文=岡本朋祐
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング