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【高校野球】北信越地区3校目は日本航空石川が選出 今センバツのキーワードは「希望の灯」

 

準決勝の戦いぶりで比較


日本航空石川高は北信越地区の3校目で選出。中村隆監督の言葉に、涙を流す部員もいた[写真=矢野寿明]


 第96回選抜高校野球大会の選抜選考委員会が1月26日、大阪市内で行われ出場32校(一般選考枠30校、21世紀枠2校)が決まった。2024年はセンバツの第1回大会から100年、甲子園球場100周年という節目である。

 北信越地区の出場枠は昨年11月の明治神宮大会で星稜高(石川)が優勝したことにより「明治神宮大会枠」をもたらせ、1枠増の3校となった。昨秋の北信越大会優勝校・星稜高、同準優勝校・敦賀気比高は順当に選ばれた一方で、残り1枠が大激戦となった。

 昨秋の北信越大会4強の北陸高と日本航空石川高との比較検討となった。「争点」となった一戦がある。福井県大会を1位で突破した北陸高は、星稜高との準決勝を1対6で敗退。対する石川県大会2位・日本航空石川高は、敦賀気比高との準決勝で善戦した。選考委員は具体的に説明した。

「日本航空石川は3点を追う7回に追いつく粘りを見せた(結果は延長10回タイブレークで、敦賀気比高が4対3で勝利)。実力は拮抗。準決勝の戦いぶりで比較した」

 ラスト3校目は日本航空石川高が選出された。石川県輪島市に学校があり、1月1日に起こった能登半島地震では甚大な被害が出た。生活拠点を系列校がある山梨に移し、練習を再開。空き教室に段ボールベッドを並べるなど、不自由な生活が続くが、地元のほか、全国からの多くの支援により、新たな学校生活がスタート。常に「感謝」を胸に過ごしている。

 今回の選考で被災地であることが、検討材料の一つになったのか。選考委員会後の取材対応で、選考委員は丁寧に説明した

「被災地であったとかは考慮されずに、純粋にガイドラインにのっとって、実力の比較で選出した」

 ただ、発表時は特別感があった。選考委員が3校の説明を終えると、選出を担当した地区別小委員会の「メッセージ」を読み上げた。

 被災地へのお悔やみと復興への願いを込め、さらには「北信越3校のみならず、出場32校が『希望の灯』となるようなプレーを見せてくれることを期待しています」と発信した。

センバツの「大会理念」


 今大会のキーワードとなるのは「希望の灯」である。

 日本高野連ホームページのセンバツの「大会理念」にはこう記述されている。

「関東大震災の傷跡がまだ生々しい1924年、『野球を通じて生徒たちに純真明朗な気風を吹き込むとともに、国民の希望の灯をともしたい』という願いをこめて誕生した招待大会である。戦争による5年の中断、社会の価値観の変化、災害や疫病などさまざまな困難に直面しながら、その在りようを時代とともに変化させ、今日まで受け継がれてきた」

 1月26日、10時からのセンバツ選考委員会総会は厳粛の中で始まった。冒頭では黙とうが捧げられた。日本高野連・寶馨会長は被災地、被災者へのお見舞いと激励の言葉を述べ「大会を通して、国民を元気づける趣旨もある」と、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災後に開催したセンバツに触れ、大会開催の意義を語った。

 復興センバツ。被災地が日々、苦しんでいる事実があり、軽々しく使ってはいけない言葉であることは十分承知している。しかし、スポーツが人々に勇気と元気を与えてきたのは、歴史が物語っている。高校球児は全力プレーで、生きていく活力を伝えていくしかない。

文=岡本朋祐
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