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【大学野球】佐々木朗希の弟・怜希はなぜ野球継続を決断したのか 「鍛えていけば伸びると思いました」

 

比べられることは承知の上


大船渡高・佐々木怜希は中大の野球部合宿所に入寮し、2月2日に初練習を行った[写真=BBM]


 黒のグラブは、体の一部である。中大の1年生・佐々木怜希(大船渡高)は東京都八王子市内の合宿所に入寮の際、大切に持ち込んだ。

「兄からもらったものです。プロ入り後に使っていたもの。3年夏の岩手大会でも使いました。大事なものです」

 兄とは4歳上のロッテの165キロ右腕・佐々木朗希である。

 兄と同じユニフォームを着た大船渡高時代は1年秋から遊撃手のレギュラー。2年夏は背番号8を着け、2年秋から「指導者とも話し合い、自分が投げれば、強くなる」とチーム事情により、投手に転向した。3年春から兄と同じ背番号1を背負った。同夏は岩手大会3回戦(対盛岡一高)で敗退(1対3)。先発した佐々木は3回途中3失点で降板し、兄が在籍した19年以来の8強進出を逃した。

「高校3年で、野球はやめるつもりでいました。大学では普通に勉強して、その後の人生を考えていこうと思っていましたが、悔しい結果で終わったので、大学で野球を続けよう、と。昨年8月に中央大学の練習を見学し、チームとして結果を残しているし、雰囲気も良い。魅力的だと思い、入学を志望しました。合格が出るまでは練習をしてはいけないので、勉強をしていました」。昨年12月のスポーツ推薦入試を突破し、中大文学部に合格した。

最速143キロ。中学時代は三塁手、高校時代は遊撃手と中堅手。投手に転向したのは2年秋とキャリアは1年余りである。グラブは兄から譲り受けたものだ[写真=BBM]


 なぜ、野球継続を決断したのか。自身の「可能性」にかけてみようと思ったのが一番だ。

「体づくり、柔軟性。鍛えていけば、伸びると思いました。投手をやって、野球の楽しさが分かりました。大学で続けようと決めたときから、投手でやっていこうと思いました」

 小学6年時、猪川野球クラブで全日本学童大会(16強)に出場した際は遊撃手、大船渡一中では三塁手だった。高校時代に使った内野手、外野手用のグラブは東京に持ってきていない。投手一本で勝負。兄と同じポジション。比べられることは、承知の上である

「プレッシャーはあるんですけど、(自分とは)レベルが違う。大きくは感じていない」

指揮官も認める素材の良さ


 好きな投手はドジャース・山本由伸。その理由は単純明快だ。

「投げたら勝てる、安定感がある」

 最速143キロ、変化球はスライダー、カーブ。遠投100メートル、50メートル走6秒2と身体能力の高さは兄譲り。中大では「野球だけでなく、勉強もしっかりやりたい。将来、どうなるか分からない」と文武両道を宣言。卒業後の進路については慎重である。

「将来の職業? 明確ではない。ちゃんとした仕事ができればいい。プロ? 大学で成功しないと……。ここで結果を残せたら。焦らずに、1年秋ぐらいから投げていければいい」

 中大は東都大学リーグ一部に所属。同リーグの青学大には大船渡一中でチームメートだった花巻東高の右腕・北條慎治(当時一塁手)、東都二部の立正大には仙台育英高の左腕・仁田陽翔(当時エース)が入学する。昨年末には地元・岩手で食事をする機会があり「皆、東都だね!!」と健闘を誓い合った。

中大・清水監督は佐々木怜希の「伸びシロ」に期待する[写真=BBM]


 中大・清水達也監督は高校時代の佐々木の動画をチェックしており、素材の良さを認める。

「身長は178センチで止まったようで、バランスが良い。青学大の常廣(常廣羽也斗広島)投手みたいなイメージを持っている。お兄さんの印象ですが、(怜希も)口数が多いほうではない。派手さもありませんが、地道に努力するタイプに見えます。入寮時、本人にポジションを確認したところ『投手でいきたいです!!』と。1年から、というのは酷ですので、まずは体づくり。2年夏までは遊撃手だったということで、フィールディングも良い。伸びシロを感じる選手です」

 高校までは自宅通いだったため、寮生活は初めての経験になる。「時間が決まっているので、自分のペースで動けない難しさはありますが、慣れていきたい。食べ物の好き嫌い? ありません。(八王子の)土地勘もないので、先輩についていきたいです」。はにかんだ笑顔は、兄そっくり。兄の汗と思いがつまった黒のグラブで、東京での大学生活が始まった。

文=岡本朋祐
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