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バウアーの去就決まらず NPB球団から「先発で15勝できる」高評価も…

 

「実力は抜きん出ている」


昨季はDeNAに所属し、10勝をマークしたバウアー


 各球団の選手たちが春季キャンプで鍛錬の日々を積み重ねる中、この右腕の去就が決まっていない。昨年DeNAでプレーしたトレバー・バウアーだ。メジャー復帰を望んでいるが有力な移籍球団は報じられていない状況で、DeNAに復帰する情報も現時点で入っていない。

 パ・リーグの編成担当はその実力を高く評価する。

「昨年の働きぶりを見たら、先発ローテーションでシーズンを回れば2ケタ勝利は計算できる。15勝も達成可能でしょう。投げる球種のすべてが高水準で、スタミナも抜群。熱い夏場に中4日で登板できるので、これほど頼りになる存在はいない。日本の環境にも溶け込んでいましたしね。DeNAに復帰するのか、NPBの他球団に移籍するのか、メジャーに戻るのか……。実力は抜きん出ているので、すべての球団が動向を気にしていると思います」

 メジャーで5度の2ケタ勝利をマークし、2020年にはサイ・ヤング賞を受賞。アメリカ球界を代表する右腕がDeNAに電撃入団したのは昨年3月だった。個性的なキャラクターで首脳陣と衝突した過去があったことから、日本野球に適応できるか懐疑的な見方があったが、その実力は本物だった。5月に一軍合流すると、登板を重ねるたびに安定感が増していった。19試合登板で10勝4敗、防御率2.76。130回2/3で規定投球回数に到達しなかったが、130三振を奪った。

投球スタイルは緻密な理論派


 勝利への執着心を前面に出すスタイルで、怒りを露わにする場面も。7月1日の中日戦(横浜)。6回二死一、二塁のピンチで岡林勇希の二塁内野安打に、一塁走者が二塁を回って飛び出したが挟殺プレーに失敗してアウトにできず。考えられないミスに大声を出して激高すると、高橋周平を投ゴロに打ち取って無失点で切り抜けた際、一塁スタンドへボールをほうり投げ、何度も吠えた。

 エネルギッシュだが、投球スタイルは緻密な理論派だ。常時150キロを超える直球を軸に、カットボール、ナックルカーブ、スイーパー、シンカー、チェンジアップと精度の高い変化球を操る。特に相手打者が驚いたのがナックルカーブだった。120キロ台後半の球速で加速しながら縦に大きく落ちる。見たこともない軌道で攻略困難な球種だ。

 メジャーで常識とされている理論に「ピッチトンネル理論」がある。複数の球種である地点に近い軌道で通過させてから変化させることで、打者からはその地点まで同じ球種に見えるため、反応することが難しい。その地点をピッチトンネルというのだが、バウアーはこの理論を見事に実践する。

若い世代への助言


 週刊ベースボールのインタビューで、ナックルカーブについて以下のように語っている。

「ピッチトンネルを考えた場合、早いカウントでボールになるような低い位置で投げてもバッターには振ってもらえません。見送られるだけのカーブはもったいない投球になってしまいます。だから追い込んだあとに、三振を含めたアウトを取るボールとしても使っています」

「もう一つ要因を挙げるなら、シーズンを通して投球を見ていくうちに、打者は私のピッチトンネルを意識下、無意識下、問わず認識していきます。打者は、同じトンネルから入ってくるボールに目付けをしていると思います。そこであえてトンネルを外れて、浮かせてストライクになるカーブを投げるのです。それが慣れてきた相手打者が見逃してしまう投球につながります」

 バウアーは若い世代への助言を求められ、「一番シンプルなアドバイスは変化球の動きを小さくすること。若い世代の子たちは、大きな変化を求めがちな傾向があります。しかし、大きな変化であればあるほど、同じトンネルを通っている時間は短くなります。逆に小さい変化でも同じトンネルを通せば、打者は反応してからアジャストすることは難しくなりますからね」と語っている。

 野球、投球への熱い思いを吐露した右腕はDeNAナインに慕われ、ファンにも愛されていた。開幕が近づいてくる中で、どのような決断を下すだろうか。

写真=BBM
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