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トリプルスリー達成できる逸材 中日移籍の「天才打者」はよみがえるか

 

新天地で快音を飛ばす


今年からは中日でプレーする上林。力強いスイングから鋭い打球を飛ばす


 沖縄・北谷で行われている中日の春季キャンプ。ロングティーで美しい軌道からサク越えを連発する選手がいた。ソフトバンクを退団し、中日に新加入した上林誠知だ。

 かつて、「トリプルスリーに最も近い男」と評された。プロ5年目の18年に全143試合出場で打率.270、22本塁打、62打点、13盗塁をマーク。149安打を積み上げ、14本の三塁打はリーグトップだった。

 ともに自主トレを行い、ソフトバンクでチームメートだった内川聖一鈴木誠也(現カブス)、上林と週刊ベースボールの企画で2019年2月に対談した際、上林についてこう語っていた。

「もともと、ここに来たら打てるというツボはあったんですよ。実際、そこに来たら打っていました。ただ、逆にそこは打てないというところがあった。そこを攻められているうちに、多少迷いが出てきたんでしょうね。でもそれって、成長するためには必要なことだと思います。そこからがレギュラーに定着できるかどうかの大事なところ。彼はそこを年々克服してきています。何がすごいかって、昨年、全試合出たことですね。試合に出ないと打席数も増えませんから。そして、自分が本当にレギュラーを獲ろうと思ったら、周りがOKというラインよりも上を行かないと。昨年は誠知のしつこさみたいなところを、僕は見させてもらいました。打席の中の雰囲気というか、堂々とした感じというのは年々増してきていますので、見ていて頼もしくなったなとは思いますね」

たび重なる故障で狂った歯車


 明るい未来が見えていたはずだったが、19年以降はたび重なる故障で歯車が狂っていく。4月に右手薬指の剥離骨折で離脱。6月中旬に復帰したが、本来のパフォーマンスに程遠い。99試合出場で打率.194、11本塁打、31打点、10盗塁と成績を落とすと、20年は69試合、21年は39試合と出場機会を減らしていく。上林はストイックな性格で知られる。打撃フォームで試行錯誤を重ねるうち、自分を信じきれない部分があった。22年のシーズン前にこう語っている。

「一貫性を持ってやる。いいときも悪いときも、あまり変えずにやる、というところがテーマになってきます。藤本(藤本博史前監督)さんからも『シーズンが始まる前には“これでいくんだ”というものを決めてやれ』と言われているので。方向性はもう、だいぶ固まってきたかなと。リストの強さであったり、長打力であったり、藤本さんから自分の長所は消すなとも言われていて」

「あとは、自分がどういうタイプのバッターなのかというのを考えたときに、やっぱり受け身にならずに攻めの姿勢で、しっかりと前で打つ。これを今、意識しています。これも前々から藤本さんに言われてきたこと。“自分のポイントで打つ”。僕の場合は前にポイントを置いたほうが、打球の勢いも出て、自分としても違和感なく(ボールを)とらえられる。あとは、タイミングですよね。タイミングが合ってのポイントなので。そこは投手によっても変わってくるところではあるので、これから開幕までの間にできる限りいろいろな投手と対戦して感覚をつかんでいけたらなと思います」

ドラゴンズで果たす完全復活


 同年は開幕一軍入りし、スタメンで出続けた。33試合出場で打率.301、1本塁打、12打点、2盗塁。春先の活躍は復活を予感させたが、5月上旬に試合前のシートノックで送球の際に転倒し、「右アキレス腱断裂」で長期離脱。ショックは大きかっただろう。昨季も56試合出場で打率.185、0本塁打、9打点に終わり、10年間プレーしたソフトバンクのユニフォームを脱ぐことになった。

 若手のときに球界を背負う若手の有望株として注目されたあと、長いトンネルからなかなか抜け出せなかったが、まだ28歳。身体能力の高さは誰もが認める。ドラゴンズブルーのユニフォームを身にまとい、完全復活を目指す。

写真=BBM
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