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同学年の山本由伸に負けない潜在能力…「投手タイトル総ナメ」期待の右腕は

 

大ブレークの予感


昨季は自身初の2ケタ勝利を挙げた今井。今季はさらに勝ち星を重ねたい


 山本由伸がポスティングシステムでドジャースに移籍したことで、注目されるのがパ・リーグの投手タイトル争いだ。2021年以降は山本が最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振と3年連続で「投手4冠」に。球界を代表するエースとして圧倒的な成績を残し続けてきた。

「ポスト山本由伸」に最も近いのはロッテ佐々木朗希だろう。最速165キロの直球、落差の大きいフォーク、140キロ台の高速フォークを駆使して能力は申し分ない。だが、プロ4年間で規定投球回数に到達したシーズンがない。体が成長段階のため、首脳陣は故障のリスクを考慮して慎重に育成してきた。2ケタ勝利を挙げた実績がないことから、コンディションを整えて先発ローテーションで1年間を完走できるかがカギを握る。

 高卒2年目から3年連続2ケタ勝利をマークしたオリックス宮城大弥、新人王を獲得した山下舜平大西武高橋光成平良海馬もタイトル争いで有力候補になる。そして、この右腕も大ブレークの予感を漂わせる。山本と同学年で、昨季自身初の2ケタ勝利をマークした今井達也だ。

 19試合登板で10勝5敗、防御率2.30。試行錯誤を繰り返していた投球フォームが固まったことで投球に安定感が増した。先発投手が6イニング以上を投げ、かつ3自責点以内に抑えた時に記録されるクオリティスタート(QS)という指標がある。今井は19試合登板中16試合でクリアし、QS率は84.2%。高橋光の73.9%、平良の78.3%を上回るチームトップ。133回と規定投球回に10イニング足りなかったが、リーグ全体でも山本の91.3%に次ぐ数字だった。

二段階伸びるストレート


 直球、スライダー、チェンジアップの3種類が90パーセントを占めるが、すべての球種の質が高い。適度に荒れていることも打者の的を絞りにくくしている。チーム内で剛速球を武器にする投手が多いが、昨年9月に週刊ベースボールの企画で<選手、コーチ、スタッフが語る>わがチームの速球王で、藤澤亨明二軍ブルペン捕手が今井の名を挙げている。その理由が興味深い。

「最速158キロですが同じ球速でも以前在籍していたギャレットよりも今井(達也)のほうが速く感じます。捕っている感覚を言葉にすると、『グン、グン』と二段階ぐらい伸びる感じ。投げた瞬間、『真ん中高めのストライク』と思って構えて捕ったら高めのボールだった、みたいな。要はホームベースを過ぎても垂れない。捕るとき、ミットを閉じてギュッと握らなくてもボールのほうからスパン! と入ってくる感じ。それが長いイニングを投げても変わらないので、本当にすごいです」

キレ味鋭いスライダー


 直球が速いだけでなく、強い。さらに、スライダーもキレ味が鋭いため相手球団から見ると攻略が難しい。習得したのは中学時代だという。今井はこう語っている。

「そのころ好きな投手が、西口文也ファーム監督、ダルビッシュ有さん、前田健太さんとか、直球&スライダーの投手だったんですよ。当時のプロ野球のトップクラスの右投手って、真っすぐとスライダーを左打者の膝下に投げて三振を取るイメージがすごく強かったので、『スライダーって三振が取れるんだ』と思って。それに、直球と似た投げ方で投げられる球種なので、中学生の僕でも一番投げやすい球種だったと思います」

 今季の目標について、「最優秀防御率、最多奪三振王のどちらかは獲りたい」と誓う。2つのタイトルを獲得するためには規定投球回数をクリアする必要がある。三振はイニング数を投げればおのずと積み重なってくる。先発ローテーションで1年間稼働できれば、最多勝、最高勝率のタイトルも狙える。

 昨年10月に開催されたアジアチャンピオンシップでは、侍ジャパンにオーバーエイジ枠で選出され、決勝・韓国戦の先発を託された。プロ入り後に初となる日の丸のユニフォームを身にまとったことは大きな財産になるだろう。エースの高橋を超えるような数字を残した時、西武のV奪回が見えてくる。

写真=BBM
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