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外野守備は球界トップクラス…中日の成長株に「糸井嘉男と重なる」

 

背水の陣の26歳


プロ4年目で外野の一角を狙う三好


 2年連続最下位からの浮上を狙う中日は、各ポジションのレギュラー争いが熾烈だ。外野陣は細川成也岡林勇希が頭一つ抜けているが、岡林は右肘の炎症で守備に不安を抱えており、開幕でスタメン出場はぎりぎりの判断になりそうだ。新外国人のディカーソン、昨季2000安打を達成した大島洋平、右肋間筋損傷からファームで実戦復帰した上林誠知、成長株のブライト健太鵜飼航丞、育成入団から早期の支配下昇格を目指す尾田剛樹が定位置奪取を目指す中、この男が攻守で輝きを放っている。入団4年目の三好大倫だ。

 26歳の置かれた立場は、背水の陣と言ってよいだろう。22年は8月20日のヤクルト戦(バンテリン)で原樹里から右翼にプロ初アーチを放つなど45試合出場で打率.218、1本塁打、2打点、6盗塁と爪痕を残したが、昨年は一軍出場なし。ウエスタン・リーグでも63試合出場で打率.257、0本塁打、16打点、9盗塁と強いインパクトを与えられなかった。

打撃フォームをガラッと変えて


 何かを変えなければ、現状を打開できない。今年は打撃フォームがガラッと変わった。バットのヘッドを投手側に傾け、投手の足を上げるタイミングに合わせて右足を高々と上げる。その打撃フォームは阪神のリードオフマン・近本光司と重なる。3月19日のオープン戦・楽天戦(岡崎)では初回に4球ファウルで粘り四球で出塁すると、2回二死一、三塁の好機では中前適時打。オープン戦は16安打を積み上げて打率.296、4盗塁と好調をキープしている。

「身体能力の高さには定評があったが、打撃できっちりミートできていない打席が目立っていました。だが、今年は違います。懐が広いタイミングの取り方で引っ張りだけでなく、逆方向にも強い打球を打ち返せるようになりヒットゾーンが広がっている。俊足を生かした広い守備範囲と強肩は岡林に引けを取らない。外野の守備だけで言えば、球界トップクラスだと思います。体が強い選手ですし、パンチ力もある。素材で言えば糸井嘉男と重なります。打撃で覚醒すれば十分にレギュラーを狙える」(スポーツ紙記者)

投手から野手に転向して1755安打


日本ハム時代の糸井。プロ3年目に野手となった


 香川・三本松高で甲子園出場なしも投打の二刀流で活躍。最速144キロの直球を投げ、高校通算26本塁打とプロのスカウトの注目を集めた。JFE西日本では3年目まで投手としてプレーし、4年目に外野手に転向。攻走守3拍子そろった好素材として評価を高め、中日にドラフト6位で入団した。

 抜群の身体能力がプロですぐに通用するとは限らない。現役時代に首位打者、盗塁王を獲得し、ゴールデン・グラブ賞を7度受賞した糸井嘉男だが、近大からドラフト1位で入団した2年間は投手として伸び悩み、プロ3年目の06年に野手転向。猛練習を積み重ね、球界を代表する外野手に上り詰めた。

 糸井は週刊ベースボールのインタビューでこう振り返っている。

「2ケタ勝利はしたいと、その気持ちで入りましたし、ずっと思っていましたが、願いはかないませんでした。今思えば、自由獲得枠というプレッシャーはなくて、プロとしての気持ちがなかったと思いますね。そのあとに野手転向を言い渡されてから、このプロ野球界の本当の厳しさを知りました。約2年で投手を失格になりましたから。そのときから気持ちを入れ替えて、死に物狂いでバットを振りましたね」

「表現が難しいですが、すんなりいかなかった19年。すぐに活躍できた人間ではなかったですから。苦しい思いもしましたので、でもそのほうがよかった、というか奥深い野球人生であったのかな、と。波乱万丈というところまでは行っていないと思いますけどね」

 糸井が外野の定位置をつかんだのが28歳。通算1755安打を積み重ねた。三好はチャンスをつかみ、ステップアップできるか。開幕がゴールではない。オープン戦の好調を持続し、シーズンでサクセスストーリーを切り拓く。

写真=BBM
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