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プロわずか1試合登板も…他球団が「大化けの可能性ある」警戒の右腕は

 

セ・リーグにはいないタイプ


新天地のDeNAで、実戦登板で好投を続ける中川


 環境を変えたことが、野球人生の転機になるか。オリックスを昨季限りで退団し、DeNAに加入したサブマリン右腕・中川颯が実戦で好投を続け、評価を高めている。

 3月19日のオープン戦・オリックス戦(横浜)に先発登板し、5回4安打無失点の好投。浮き上がる球質の130キロ台の直球と、カーブ、スライダー、ツーシーム、チェンジアップと多彩な変化球で凡打の山を築く。2回一死一、二塁のピンチではマーウィン・ゴンザレスを二ゴロ併殺。4回も先頭打者の頓宮に左前打を許したが、続くT-岡田を二ゴロ併殺に仕留めた。対外試合は4試合で16イニング連続無失点。他球団のスコアラーは警戒を強める。

「昨年もファームでは格の違いを見せていました。DeNA以外も獲得に興味を示した球団はあったと思います。中川は強い直球を投げられるので緩急が効いてくる。打たせて取るだけでなく、三振奪取能力が高いし、制球で崩れる心配がない。投球フォームを見れば分かるとおり、正統派のアンダースロー。ああいったタイプの投手はセ・リーグでなかなかいない。大化けの可能性が十分にあります」

オリックスで支配下復帰ならず


 ドラフト4位で入団したオリックスでは新人の2021年に開幕一軍入りを果たし、7月14日の日本ハム戦(帯広)でデビュー登板。ウエスタン・リーグでは41試合登板で防御率1.12と抜群の安定感で明るい未来を予感させたが、翌22年は右肩の不調で一軍登板なしに。育成契約となった昨季はウエスタン・リーグで21試合登板して防御率1.38。ケガからの完全復活を印象付けたが支配下昇格はならず、戦力外通告を受けて退団した。

 育成から支配下昇格は、チームの補強ポイントに合致する選手の優先順位が高くなる。オリックスは先発、救援陣が充実していたため、中川が一軍のマウンドに戻ることができなかったが、他球団ならまだまだチャンスはある。

 小学生のころはサイド右腕だったが、中学1年でアンダースローに。参考にしていたのは当時ロッテで活躍していたサブマリン・渡辺俊介。成長期で30センチ以上身長が伸びて180センチを超えたが、独特の投げ方にこだわった。桐光学園高では1年夏からベンチ入りし、2年秋からエース。立大に進学すると、1年春にリリーフで15試合中10試合登板のフル稼働で優勝に貢献。大学選手権でも3試合登板、防御率0.00の好投で最優秀投手賞に輝き、59年ぶり大学日本一の立役者となった。

最も身近にあった球団で


 オリックスはわずか3年の在籍期間となったが、救いの手を差し伸べてくれたDeNAで復活を期す思いは強い。横浜で生まれ育った中川にとって、DeNAは最も身近にある球団だった。生まれた1998年は横浜(現DeNA)が38年ぶりのリーグ優勝、日本一に輝いているが、あの栄冠から25年以上リーグ優勝から遠ざかっている。先発の大黒柱だった今永昇太(現カブス)がポスティングシステムでメジャー移籍し、トレバー・バウアーもメキシカン・リーグのメキシコシティー・レッドデビルズと短期契約を結んだ。戦力ダウンが懸念される中で、新戦力のアンソニー・ケイアンドレ・ジャクソン、中川が先発ローテーションで白星を重ねられるかがポイントになる。

ロッテでアンダースロー投法を駆使して通算87勝を挙げた渡辺


 渡辺俊介(現日本製鉄かずさマジック監督)はかつて、週刊ベースボールのインタビューでアンダースローの利点についてこう語っていた。

「アンダースローの有利な点は球の軌道だよね。浮いてはいないけど、オーバースローに比べたら浮いているように見えるから。これは特に海外で有効。向こうは上から投げる角度ある球が多いから。だから、カブスの上原(上原浩治)さんが活躍しているのも、スピンのかかった浮き上がるように見える真っすぐがあるからだと思う。アンダースロー自体は海外でもたくさんいる。ただ、彼らは落ちるシンカーばかりを投げ、浮き上がる真っすぐは投げない。というか、アーム式で、腕が体から離れているので、投げられない」

 中川が新天地で輝けば、アンダースローに挑戦する子どもたちの道標になるかもしれない。

写真=BBM
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