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【高校野球】日本学生野球協会が「憲章違反行為」で盛岡誠桜高(岩手)の校長兼野球部長を謹慎処分に

 

「レアケースです」


日本学生野球協会の審査室会議で盛岡誠桜高[岩手]の一連の対応について審議された[写真はイメージ]


 日本学生野球協会は4月9日、東京都内で審査室会議を開き、盛岡誠桜高(岩手)の校長兼野球部長を「憲章違反行為」として、4月10日から5月24日まで謹慎処分とした。

 経緯を見ていく。昨年8月以降、岩手県高野連に対して3つの情報提供(3年生野球部員Aの飲酒行為について。野球部指導者の一般生徒への暴言及びハラスメント行為について。複数の野球部指導者による野球部員への暴言・ハラスメント行為について)があった。

 岩手県高野連は学生野球憲章にのっとり、同校に対して、電話・面談・文書を通じて計4回にわたり、調査及び報告を求めたが、これに応じなかった。岩手県高野連は同校の対応について「日本学生野球憲章違反(※1)」であるとし、同校に対して1月16日に日本高野連へ不祥事報告書を提出することを文書で通知。日本高野連は同24日の審議小委員会で同校野球部に対して厳重注意措置と、2月7日までに調査・報告を求める付随的指導を決定した。

【※1 補足資料】
<日本学生野球憲章>第5条(学生野球に関わるすべての者の義務)学生野球団体、野球部、部員、指導者、審判員、学生野球団体の役職員および審査員は、本憲章および関係する学生野球団体の定める規則を遵守する義務を負い、本憲章の理念に基づく学生野球の実現を目指す。
<注意・厳重注意及び処分申請等に関する規則> (加盟校の事案の調査と報告) 第6 条 加盟校の校長は、当該校の関係者について、本憲章に違反する事実があると考え、又は本憲章の理念を実現するために注意・厳重注意が必要と考えられるときは、直ちに、事実関係を調査し、各都道府県高等学校野球連盟に次の事項を報告する。

 ところが、盛岡誠桜高はこの要請にも応じなかった。日本高野連は2月16日、全体審議委員会において、あらためて同校に厳重注意措置と2月26日までに調査・報告を求める付随的指導を決定。だが、同校は期日までに日本高野連は求める報告書を提出しなかった。日本高野連は3月1日、全体審議委員会を開き「日本学生野球憲章第27条第1項違反」(※2)により、当該校野球部の指導者に対して日本学生野球協会審査室への処分を上申することを決定した。3月5日に審査室会議が開催されたものの、膨大な資料により「継続審議」となり、4月9日にあらためて審議された。

【※2 補足資料】
<日本学生野球憲章> 第27条(日本学生野球憲章違反に対する処分) 日本学生野球協会は、学生野球団体、野球部、部員、指導者、審判員および学生野球団体の役員が本 憲章に違反する行為をし、または前条の注意または厳重注意にしたがわない場合には、当該の者に対 して処分をすることができる。

 今回、盛岡誠桜高の校長兼野球部長(校長は2月23日に野球部長に就任し、4月7日付で新野球部長に交代)の「謹慎処分」について、辻村哲夫審査室長は説明した。なお、日本学生野球協会は同校に対して5月10日までの「調査・報告」の依頼を付随している。

「岩手県高野連からの依頼に対して『学校の自治』『高野連が関わることではない』という独自の解釈で調査・報告をいただけませんでした。日本高野連からの繰り返しの要請にも応じず、そこで一定期間が経過したところで『厳重注意』という形で指導いたしました。これは、処分ではありません。ただ、2度の厳重注意にも一向に調査・報告がなされない。それが(日本学生野球協会へ)処分申請が上申されてきた経緯であります。今回、あらためて、日本学生野球憲章に基づいて審議いたしました。調査・報告を求めていたにも関わらず、ルールに反し、応じていただけない。(今回の)謹慎処分と付随して同校、野球部指導者に対して5月10日までの調査・報告の提出を求めています。(岩手県高野連を通じて、日本高野連を経由しての)処分申請を受けて、私どもは次回の審査室会議である5月24日の議題とします。(不祥事案の)事実関係がはっきりした段階で、通常の審議に入るんですが、今回の場合はその前段階。私が知る限り、こういう事例は初めて。レアケースです」

 仮に今回の要請にも応じなかった場合、5月24日の審査室会議で、再び「前段階」が検討される。あくまでも、校長兼野球部長への処分であり、春季大会への出場について辻村審査室長は「ルールとしては、そこには影響しない」と言った。その上で理念を示した。

「私たちは学生の野球を守る。この立場が判断ベース。基本的な観点を抑えて、考えたい」

 最後に日本学生野球憲章の一部を確認する。

 第4条(学生野球を行う機会の保障および部員の権利)学生は、合理的理由なしに、部員として学生野球を行う機会を制限されることはない。2 部員は、学生として教育を受ける権利が保障される。3 部員は、本憲章に基づく学生野球を行う権利を有する。

 第7条(加盟校および指導者の責務) 加盟校の学校長は、本憲章に基づく加盟校の義務を遂行するための最高責任者である。

 高校野球の主役は、言うまでもなく部員(生徒)だ。野球の試合はルールを守り、審判員の判定の下で進行する。野球部の運営面においては、日本学生野球憲章というルールの下で動く。現場がより良い環境で活動を展開していくためにも、冷静な判断が求められる。
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