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投手王国の西武 「2人の天才打者」がV奪回のキーマンに 

 

起用法の幅が広い選手


4月6日の日本ハム戦で今季1号アーチを放った岸


 強固な投手陣で開幕から3カード連続と好発進を切った西武ロッテには2連敗を喫したが、今後白星を重ねていくために「2人の天才打者」が攻守のキーマンとして期待が掛かる。

 1人目は岸潤一郎だ。守備と走塁は能力の高さに定評があったが、今年は打撃でも春先からアピールしている。今季初スタメンとなった4月6日の日本ハム戦(エスコンF)では、左腕の加藤貴之から4回に今季初アーチとなる左越えソロを放つなどマルチ安打。この試合から3試合連続マルチ安打を放ち、打線の核になっている。

 岸は高校時代に世代のトップを走る選手だった。明徳義塾高1年で夏の甲子園に出場するなど甲子園に4度出場。投打で輝き将来を嘱望されたが、進学した拓大では度重なる肩肘の故障の末、3年秋に退部。大学も中退し、野球から身を引くことを決意したが、四国アイランドリーグplus・徳島からオファーをもらって出直すことに。俊足と内外野を守れる守備力、パンチ力を評価され、ドラフト8位で西武に入団した。2021年に9本塁打を放つなど身体能力は高い。小技も器用にこなし、首脳陣にとっては起用法の幅が広い選手だ。

 岸は21年7月に週刊ベースボールのインタビューで、理想の選手像についてこう語っている。

「入団時から変わっていませんが、やはりチームの先輩である外崎修汰さんのような選手が僕にとっての理想ですね。まず、外崎さんは内外野を高いレベルで守ることができます。僕は独立リーグでは内野も守っていました。今は外野の練習しかしていませんが、いずれは内外野を任せられるユーティリティー選手になりたいです。打撃でも外崎さんはスイングが強い。僕も外崎さんのように力強くバットを振って、鋭い打球を飛ばすことが目標です」

 外野の3枠はレギュラーが決まっていない。確実性を磨けば、覚醒の可能性を十分に秘めている。

重い呪縛から解放されて


高い打撃センスをさらに試合で発揮したい西川


 この選手も飛躍の時を迎えようとしている。プロ7年目の西川愛也だ。開幕スタメンは逃したが、「七番・中堅」で今季初のスタメン出場を飾った4月2日のオリックス戦(ベルーナ)で躍動した。2回無死一、二塁で投前にバント安打を決めて先制点の呼び水に。2点リードの6回一死ではカスティーヨの直球を右中間に運び、プロ入り初の三塁打をマークした。5日の日本ハム戦(エスコンF)では、同点の7回一死一、二塁のピンチで加藤豪将の中前打に反応すると、ノーバウンドの完璧な送球で本塁生還を狙った二塁走者を阻止した。アウトを奪った。フィールドで行われた日本ハム戦で、レーザービームで走者を刺した。

 西川も岸と同様に、アマチュア時代は世代のトップランナーだった。小学生のときに全国制覇を経験し、花咲徳栄高では甲子園に3度出場。3年夏には全国制覇を飾った。ドラフト2位で西武に入団し、明るい未来を切り拓くと思われたが、待ち受けていたのは試練の連続だった。高校時代に右大胸筋断裂の大ケガを負った影響でリハビリからスタート。肩を完治後も度重なる故障に見舞われた。

 20年のデビュー戦でプロ初安打を放ったが、2本目がなかなかでない。22年シーズン終了まで無安打状態が続いた時期が精神的に最も苦しかっただろう。昨季は4月30日の楽天戦(ベルーナ)で、7回にNPBワースト記録の62打席無安打で止める中前打を放ち、重い呪縛から解放された。41試合出場で打率.227、1本塁打、8打点、4盗塁は満足できる数字ではないが、「ラストチャンス」と位置付けたシーズンで手ごたえをつかんだ。8月は月間打率.273をマーク。嶋重宣打撃コーチが伝えた「左目でボールを後ろから見るような感覚」がイメージと合致し、コンタクト能力が格段に上がった。

「その感覚をつかめたことで、自分の中に“軸”ができるようになって、自然とポイントも前で打てるようになりました。ボールもあまり速く見えなくなったので、右足を着くまでの“間”も長く取れるようになったと思います。そこから、すごく良い感じで打てるようになりました」

 岸、西川は共にアマチュア時代の栄光を取り戻す意識はないだろう。目指すのは西武で5年ぶりのリーグ優勝に貢献すること。主役じゃなくてもいい。攻守で縁の下の力持ちとしてチームを支える。

写真=BBM
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