週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

伸び悩みでトレード要員報道も…高橋周平が「中日に不可欠な存在」に

 

チームの勝利に貢献するベテラン


開幕からスタメンで出場し続けている高橋周。チームに欠かせない選手だ


 攻守がかみ合い、首位を走る中日。その原動力になっているのが、プロ13年目の高橋周平だ。

 開幕から「三番・三塁」で全12試合スタメン出場し、打率.241、0本塁打。際立った数字を残しているわけではないが、打席の内容は決して悪くない。4月10日のDeNA戦(横浜)では2回に一塁適時内野安打を放つと、4回に左前打、8回に二塁内野安打で開幕戦以来の猛打賞をマーク。通算1000試合出場を飾り、チームの勝利に貢献した。12日の阪神戦(バンテリン)も2試合連続マルチ安打と状態を上げている。

 他球団のスコアラーは、こう分析する。

中田翔の加入で自分が決めなければという負担が軽くなり、自然体で打席に入れている印象があります。石川昂弥という和製大砲がいますが、三塁の守備能力は高橋周が格段に上です。守り勝つ野球を標榜する中でチームに不可欠な存在になっている」

 完全復活と判断するのは早計かもしれない。ただ、近年の伸び悩みを考えた時に現在の立ち位置を勝ち取ったのは大きな価値がある。かつては主力選手として活躍したが、打撃面で試行錯誤を繰り返して近年は出場機会を減らしていた。昨年は石川昂の台頭もあり、35試合のスタメン出場にとどまった。172打席は一軍に定着した2018年以降で自己最少。打率.215、0本塁打とふるわず、「トレード要員」と報じられたこともあった。

ひっくり返した序列


 失った信頼を取り戻すためには、結果を残すしかない。プロ13年目の春季キャンプは初の二軍スタートとなり、黙々と汗を流した。3月中旬にオープン戦の西武戦(ベルーナ)に2試合限定で一軍参加し、猛打賞と結果を残して一軍にそのまま同行。バットのトップを投手側に傾け、タイミングの取り方がしっくりきたのだろう。新しい打撃フォームは懐が深く緩急に崩されることが減り、力強い打球が広角に飛ぶように。オープン戦打率.391の好成績を残し、三塁の定位置の本命とされていた石川昂との序列をひっくり返した。開幕戦のヤクルト戦(神宮)では適時打2本を含む猛打賞。白星発進とならなかったが、大きなインパクトを残した。

 19、20年に2年連続ゴールデン・グラブ賞を受賞するなど、三塁の守備力には定評がある。昨年まで中日のコーチを務めた野球評論家の荒木雅博氏は週刊ベースボールの取材で、「高橋選手は僕も気になっています。まだまだやれる選手ですし、やってもらいたい。ただ僕は二塁ではなく、三塁でもう一度、勝負してもらいたい。二塁の守備も確かにうまいですが、三塁は抜群にうまい。石川(石川昂弥)選手のためにも三塁で勝負して意地を見せてほしいです」とハッパをかけていた。

野球を熟知する選手の必要性


 30歳はまだまだ老け込む年ではない。高橋周があこがれの選手として挙げていた森野将彦(現中日二軍打撃コーチ)は30歳を超えてから全盛期を迎えている。31歳シーズンの09年に打率.289、23本塁打、109打点をマーク。翌10年も打率.327、22本塁打、84打点で45本の二塁打は2年連続リーグトップだった。チャンスに強く3ラン本塁打が多かったことから「ミスター3ラン」の異名も。落合博満元監督が築いた黄金時代の主力選手として活躍した。森野コーチは週刊ベースボールのインタビューで、自身の強みについて以下のように語っていた。

「野球に対する知識であったり、野球を考える力というか、こうしたらもっと相手が嫌がるかな、ということをつき詰めたり。僕、ルールブックなどをよく読むんですよ。誰も知らないことを知ろうとする探究心は負けたくなかったですね。野球が好きじゃないと絶対にできないと思うんですよ。ただ漠然と投げて、打ってという選手にはなりたくなかった。野球をするならその根本のところを知らないといけないとは思っていました」

 球団史上初の2年連続最下位から巻き返しを狙うために、「野球を熟知している選手」が1人でも多くチームの核にならなければいけない。安打は打てなくても進塁打で走者を進め、中田に好機で回せるか。好守でチームのピンチを救えるか。高橋周に求められる役割は目に見える数字だけではない。過去の栄光を取り戻すのではなく、ここから全盛期を築けるか。まだ三塁のレギュラーをつかんだとは言えない。一軍でプレーできる喜びを胸に秘め、チームの勝利に向けて全身全霊を捧げる。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング