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大勢に完全復活の予感 他球団から「新人で活躍したときより、今のほうが難敵」

 

相手を圧倒するピッチング


今季は開幕から好調な滑り出しを見せている大勢


 この男は守護神が似合う。巨人・大勢が開幕から完ぺきな投球を続けている。

 プロ3年目の今年は春季キャンプで右ふくらはぎ痛で戦線離脱し、3月下旬に一軍復帰。開幕に間に合うか不安視されたが、杞憂に終わった。初登板は3月29日の開幕・阪神戦(東京ドーム)。大山悠輔佐藤輝明を連続三振に仕留めると、前川右京は振り逃げとなったが、坂本誠志郎を三ゴロに仕留めた。4月4日の中日戦(バンテリン)では2点リードの9回に登板し、三好大倫田中幹也が打席に立ったときに自己最速の160キロを計測。球団の日本人投手では初の160キロ超えを果たし、3者連続空振り三振で締めて今季初セーブを飾った。

 9日のヤクルト戦(鹿児島)でも2点リードの9回に登板し、オスナを遊ゴロ、村上宗隆サンタナから空振り三振を奪うなど3者凡退と危なげない内容で締めた。5試合で3セーブ1ホールド、防御率0.00。5イニング投げて10奪三振と完璧なスタートを切った。

 他球団の首脳陣は「新人で活躍したときより今のほうが攻略は難しい。直球の球威が上がって浮き上がるような軌道でタイミングが合わせづらい上に、フォークの精度が高いので対応が難しい。大勢が登板する試合展開に持ち込みたくないですね」と語る。

2年目に待っていた試練


 1年目の2022年に37セーブで新人王。昨年は春先に侍ジャパンに選出され、WBC制覇に貢献した。開幕に向けて順調な調整を送り、「ダンプ辻」の愛称で知られる野球評論家の辻恭彦氏は仕上がりを高く評価していた。

「巨人の大勢が、すごくいいなと思いました。去年、疲れたときに少し肘が下がり、その分、腕の出がイメージより遅れるので、自然と体の開きが早くなっていた、という話をしたことがありますよね。最後、少し押し出す感じになって球威も今一つになっていました。今年もブルペンの映像を見ていたら、やっぱり少し下げて投げていたときがあったんですが、それでも体が開かず、我慢していい感じで投げていました。『あ、これはいいな。悪い癖がなくなった。フォームを変えたのかな』と思ったら、普段の肘の高さでもちゃんと投げていました。意識してかどうかは知りませんが、これは2種類使えるようになったのかなと感心しました。彼は2年目のジンクスなんて関係なさそうですね」

 だが、待ち受けていたのは試練だった。6月までに14セーブを積み上げたが、右上肢のコンディション不良で2カ月以上離脱。守護神の不在はチームにとっても大きな痛手だった。7月以降は白星を積み重ねられず、優勝争いから脱落。先発が踏ん張っても救援陣が不安定なため手痛い逆転負けを喫するパターンが続いた。大勢は9月中旬に復帰したが、直球に本来のキレが見られず空振りを奪えない。痛打を浴びる登板が目立ち、3試合登板で計5失点を喫した。防御率4.50まで悪化し、シーズンを終えた。

指揮官が口にしていた信頼感


 今年にかける思いは強い。1月の自主トレでは奈良・葛城市の「二上山ふるさと公園」で456段の階段を10往復する過酷なメニューをこなすなど自分を追い込んだ。2月の春季キャンプは故障で離脱したが、ファームで調整する期間を成長への糧にした。投球時の悪癖だった前傾姿勢を矯正するため、ヒールアップ投法をやめたフォームに改良したことで、直球の威力が増した。

 今年から就任した阿部慎之助監督は大勢への強い信頼感を口にしていた。週刊ベースボールが開幕前に行ったインタビューで投手陣のキーマンについて聞かれると、「ケガで出遅れてしまいましたけど、シーズン全体を考えたときには大勢ですよね。やっぱり後ろがしっかりすれば、すべてが落ち着くので。逆算ではまっていく。後ろが不安定だと、チーム全体がガタガタと行ってしまうかもしれない」と期待を込めていた。

 大勢は「最後は胴上げ投手になりたい。目標は40セーブ」と掲げる。巨人の抑えで40セーブを超えた投手は、08年に41セーブのマーク・クルーン、13年に球団最多の42セーブを挙げた西村健太朗の2人のみだ。両投手は40セーブをマークしたシーズンで最多セーブのタイトルも獲得し、リーグ優勝を果たしている。

 シーズンは長い。大勢が故障で離脱せずにセーブを積み重ねれば、4年ぶりのV奪回は現実のモノになる可能性が高い。

写真=BBM
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