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デーブ大久保 さあ、話しましょう!

ファンあってのプロ野球を再認識です。コロナ禍で前進していることを実感/デーブ大久保コラム

 

座る間隔を保ちながら、ひいきのチームを応援するファンの皆さん。待ちに待った試合を目の前で見られるのですから……興奮するはずです。しかし、まだまだコロナ禍。気を付けていきましょう/写真=早浪章弘


 西武時代、控えメンバーとして川崎球場でロッテと戦ったとき「少ないなあ、お客さん。数えてみよう」と試合中にもかかわらず観客を数えました。200人くらいだったことを覚えています。

 その25倍ではありますが(笑)、あの大きな球場に5000人しか入らないとなるとかなり少なく、無観客とそれほど変わらないんだろうな、と想像していたのです。でもやはりファン、観客が入った球場は、まったく雰囲気が違いましたね。

 あらためてプロ野球は「ファンがいるからこそ」あの試合の雰囲気が作られる。「ファンあってのプロ野球」を実感しました。私以上に現役の選手がそれをすごく感じたのではないでしょうか。

 試合前の練習。無観客試合のときは、もちろん緊張感はありますが、それでもお客が入ってこないことで、何か物足りなさを感じていました。先々週から、16時開門となり、お客さんが入ってから、あの独特の緊張感が球場内に流れていました。多分選手たちも「あ! これだ。いつもの感覚」だったと思います。

 でも、ここからが本当に新型コロナウイルスとの戦いです。世間では各県同士の往来が自由となり、プロ野球同様、Jリーグなどのプロスポーツ、そして演劇などでもお客さんが入るようになりました。その中で劇場にてクラスターが発生してしまいました。これがプロ野球で起こってしまうと非常に厳しい状況になると思います。

 来場したファンの皆さんのうれしそうな顔を見て、よかったなあと。そして、拍手だけという中でついつい声を出してしまうということも見受けられました。甲子園ではヤジを飛ばし、審判団に注意を受けたファンもいました。待ちに待ったプロ野球ですから、興奮するのは仕方ないことです。状況が落ち着くまで、ファンの皆さんも少し気持ちを落ち着かせて観戦してもらえると、クラスターは抑えられると思います。

 しかし、気持ちを抑えるのはなかなか難しいですよね。毎日試合を見に来るわけではなく、今年は人数制限があるので、観戦しに行けたとしても数回くらいでしょう。目の前で真剣勝負を見てしまうと興奮してしまうものです。選手たちも、お客さんがやっと入ったという中で、真剣な戦いをしていることが、ファンの興奮をあおっているとも言えます。それはある意味、選手たちの無言の感謝の表れでしょう。

 コロナ禍の中で、居酒屋を経営していても、日ごろの生活を送っていても、前に進んでいる感覚が持てなかったのも事実。しかし、ファンがいる球場でプロ野球が行われている現実を目の当たりにし「新型コロナに立ち向かい、前に進んでいる」と実感しました。だからこそ、ここから先も気を抜くことなくファン、球団一体となってシーズンを盛り上げてほしいと思いましたね。

『週刊ベースボール』2020年8月3日号(7月22日発売)より

PROFILE
大久保博元/おおくぼ・ひろもと●1967年2月1日生まれ。茨城県出身。水戸商高から85年ドラフト1位で西武に入団。トレードで巨人入りした92年に15本塁打。95年現役引退。野球解説者やタレントを経て、2008年に西武コーチに就任し日本一に貢献。12年からは楽天打撃コーチ、二軍監督を経て15年に一軍監督に就任した。15年限りで辞任し、16年から野球解説者をこなしながら新橋に居酒屋「肉蔵でーぶ」を経営している。

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