週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

45回連続無失点中! 沢村賞は中日・大野雄大か、それとも巨人・菅野智之か

 

点を取られない竜のエース


もはや完投が当たり前。圧巻の投球を続ける竜のエース・大野雄


 一体何が起こったのか。中日ファンだけでなく、プロ野球ファンの誰もがそう感じているだろう。中日のエース・大野雄大だ。竜の左腕が突如、覚醒した。

 今季18試合目の登板となった10月22日のDeNA戦(ナゴヤドーム)は1対0のシャットアウト。5年ぶりとなる2ケタ勝利に到達したが、10勝のうち6勝が完封だから恐れ入る。しかも継続中だった連続イニング無失点は球団記録(大矢根博臣の40.1回)を64年ぶりに更新して45まで伸ばした。初回の1点を最後まで守り抜いたエースが、安堵の表情で口にした。

「今日はいろんなことが詰まった試合でした。自分が最後まで投げ切ることで、チームにプラスのことが生まれると思って投げました。今日だけは褒めてください」

 優勝は絶望的になったものの、チームは8年ぶりのAクラス入りを目指して大事な戦いを続けているから、エースとして負けられなかった。

 今年は3年ぶり3度目の開幕投手を務めたものの、初勝利は7試合目の登板となった7月31日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)だった。「遅過ぎますね」と苦笑したが、そこからは2完封を含む5試合連続完投勝利を達成。倍返しの活躍を見せたが、さらに9月22日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)からこの日まで、ふたたび5試合連続完投勝利。しかも今度はうち4完封の快投劇。まさに無双状態と言っていい。

 キレのあるストレートがよく走るから、得意のツーシームが威力を発揮する。内外角をていねいに突き、打者に的を絞らせない。勝てている分、気持ちに余裕があり、周囲もよく見えて打者を手玉にとっている。

 防御率は1.79まで上がった。奪三振数も137とし、どちらも巨人のエース・菅野智之を抜いてリーグトップ。勝利数と勝率こそ開幕13連勝した菅野には及ばないものの、その内容は優るとも劣らない。いや、むしろ上回っているのではないか。


 そこで気になるのは沢村賞のタイトルだ。残り試合を考えれば2人とも登板は2試合ほど。沢村賞7項目の比較は別表のとおりだが、際立つのは大野雄の完投数。菅野の3完投をはるかにしのぐ10完投。今年が短期決戦の120試合制と考えれば驚くべき数字と言えるだろう。菅野の開幕13連勝は巨人を優勝に導く大きな要因となったことで価値は高く、そこが評価の分かれ目となりそうだ。

「(沢村賞は)狙って獲れるものではないと思うし、投げたあとでいろいろとついてくれればいいと思っています」

 大野雄は平常心を強調するが、意識していないわけはない。シーズンオフにはFA問題が待っている。今季のFA取得を見越し、球団は昨年オフに3年契約も提示したが、大野雄は「まず(2020年を)しっかりやりきりたい」と単年を選択した。移籍か、残留か、どちらにしろ沢村賞のタイトルを獲得できれば、自身の評価はさらに高まる。

 沢村賞の選考委員長でもある堀内恒夫氏は「すごい、のひと言に尽きる」と大野雄の投球を評価しているが、果たしてどちらが獲得するだろうか。

写真=BBM

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング